再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 
 通りに出ると、手を繋いでくる。
 びっくりして、手を持ち上げると上から亮ちゃんが私の顔をのぞき込み、いいだろ?と言う。
 恥ずかしくて真っ赤になってると、クスクスと笑う声が上からする。

 「雫、いずれ俺のマンションに越してきてもいいように、会社と雫の実家の間にマンションを探す。そして、お前が一緒に住んでもセキュリティーに問題がない所を探すつもりだ。自分の家を探すつもりでいっしょに探してくれよ。」

 それで、私を物件探しに巻き込んだって訳か。最初から私を口説くつもりで?

 「亮ちゃんさ、前は自分から前に出るタイプじゃなかったよね。どちらかと言えば、静かに後ろで時期を待つ犬みたいな。」
 「そういや昔、雫から犬に似てるとか言われたな。本気で言ってたのか?ハムスターって言われて腹立てて言ってるのかと思ってた。」
 むっ。腹立つ。

 「ほら、また、ハムスターになってるぞ。」
 ほっぺを握られる。

 「なんか、人が違ったみたい。最初から私と付き合う前提の話になってない?」
 「だから、さっきも言っただろ。お前に付き合っている奴がいたら、奪う計画までしてきたって。」

 「信じらんない。そんな人とは。」
 「嫌いになったか?」

 「そうね。もしかすると、嫌いになるかも知れないね。」
 「そうさせないように、色々計画してるからな。逃げられないぞ。」
 何なの、この人。怖いんですけど。

 立ち止まって、亮ちゃんの顔を見る。
 いやだ、悪い人みたいな微笑み。 
 こんな顔するんだ。

 私の知ってる亮ちゃんじゃないんじゃん。
 早まったか私。

 
 
 
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