再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした

対決

 月曜日。朝から憂鬱。

 とりあえず、エントランスを通り過ぎるときは下を向き、朝早めに出たので誰にも会わない。
 一息ついて、フロアに入ると澄ちゃんが待ってましたとばかり、給湯室から出てきた。
 「先輩。聞きましたか?営業部の飲みのはなし。」
 イヤだよー朝から、後輩にいじめられるなんて想定外です。
 「……いいえ、特には。」
 ニタニタ笑い顔やめてってばー。
 「気をつけて下さい。先輩のことが話に上がったそうで、1課と2課の営業事務はほとんど敵になりました。私もできる限り、お守りしますが、本当のことを早めに打ち明けて下さいね。そうだ、時田さんと沢渡さんは圏外ということでいいですよね?」
 ……なんてことを言うんでしょうか。
 「す、澄ちゃん。」

 先輩の宝田さんが入ってきた。
 「おはよう、花崎さん。」あ、何も言わない。良かったー。
 「おはようございます。」頭を下げる。
 後ろから、崎田課長。
 「おはよう、花崎さん。モテモテだったらしいね。」ハー。ダメだこりゃ。
 「え?何がモテモテだったんですか?」宝田さんが聞いてしまう。

 「なんか、営業の金曜日の飲み会でウチのチーフを巡る戦いがあったらしいよー。イヤー鼻が高いね。花崎さんのお陰で、総務はウチの営業の憧れの女性のいるところになったよ。」
 「……。」
 「私達もですか?崎田課長?」宝田さんと澄ちゃんが、角突き合わせて崎田課長を囲む。
 「……!も、もちろんだよー、何言ってるんだかー。君たちだって憧れの女性だよ。」
 「……へー。課長からそんなこと言われたことも、誘われたこともありませんでしたが。」
 宝田さんのブーメランが飛んでいく。

 
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