再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 確かに、話さないとこれはダメでしょう。
 新田さんにはOKの返事をした。

 午後に入ると、営業事務の子達が仕事を理由にこちらのフロアに来だした。
 わざと私を指名して、どうということのないことを頼む。

 顔をじろじろ見られて、ふーん、とか言われる。
 澄ちゃんが横から入ってきて、なんですか?と睨む。
 ヘトヘトになった頃、就業時間。残業する気も起きないが、とりあえず約束の時間まで残業して、疲れたからだにむち打って、非常階段で下へ。新田さんに指定された居酒屋へ行く。個室を取ってあるという。怖いよ。

 ちょっと高そうな居酒屋さん。小料理屋みたいな雰囲気もある。のれんが出てる。

 新田さんの名前を言うと、案内されて二階へ。
 失礼しますと仲居がいうと、どうぞと声がする。

 入ると新田さんが座っている。
 私をじっと見つめている。笑顔ひとつない。謝れよーと思うのに、睨まれる覚えもない。
 
 とりあえずビールと頼むと、仲居が出て行く。
 向かい合って座ると、新田さんがため息をついた。

 「こんなはずじゃなかったのに。君もひどいな。」
 え?それはこっちの台詞です。
 「新田さん。けんかはしたくありませんが、勝手に私のことを飲みの席で魚にして、それでこの台詞はないんじゃないですか?私、今日どれだけ大変だったか……。」

 失礼しますと言う声がまたする。はいと新田さんが答える。
 ビールを持った仲居さんの後ろから、え?

 「新田、待たせて悪い。」
 入ってきたのは亮ちゃん。ふたりの顔を見比べて呆然とする。

 
 
 
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