再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 「いえ。出来ればもう少し遅く来て欲しかったです。」
 亮ちゃんは私を押して、横に腰掛けた。

 「……どういうこと?」
 小さな声で亮ちゃんに話しかけた。

 「言ったろ?雫が誰のものかハッキリ言わないと、新田は諦められないだろうから。雫にも認めてもらわないと信じてもらえないからな。」唖然呆然。

 「亮さん。突然ですよね。花崎さんと付き合っていたなんて聞いてないし、絶対嘘だ。どんな魂胆です?いくら先輩でも譲れないですよ。」睨む新田さん。まずいよ。
 「あ、あの……実は……」

 「雫と俺は幼馴染みだ。帰国も雫を自分のものにするため。それはお前に言うはずないだろ。」
 「……幼馴染み?」

 「そ、そうです。本当です。8年前まで近所だったんです。高校卒業して亮ちゃんがアメリカに行ってしまって。」
 「……亮ちゃん?」

 「あ、すみません。」
 「新田、分かっただろ?雫と幼馴染みだと社内で言うと、彼女が質問攻めになるのはわかっていたから内密にしていたんだ。」

 「で、昨日の今日で急に付き合うってどういうことですか?」
 「昨日の今日ではない。週末に会って俺は気持ちを伝えるつもりだったし、約束もしていた。前日の金曜日にお前の気持ちを知ることになったのは、想定外なんだ。」

 
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