再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 
 「人事はそれまでに給与や機構改正の準備、総務はフロアの改築など色々ある。業務のほうでは、プレス発表も予定しているので、会社全体で動き出す大きな案件だ。とにかく、総会も近くて総務部は忙しいだろう。人が足らない場合は、人事からも応援を出す予定だ。無理はしないで、出来うる範囲で気張って欲しい。以上だ。」

 皆、プリントを凝視して静かにしている。
 こんなに大きな課になるんだ。亮ちゃんって本当にすごいんだと再認識した。

 総務だけでその後会議になり、担当割りをした。
 私はチーフなのですべてに関わらざるを得ない。
 病み上がりで心配されたが、そうも言っていられない。
 
 その日から、私のゴシップのような噂話より、この機構改正のほうが大きな噂になり、心配は無用になった。

 あっという間に総会の日になった。
 その日、高野亮は営業部長付という部長代理も務められるポジションとなった。

 そして、営業部を管轄していた専務の下に入り、役員補助の仕事もすると発表になった。
 つまり、いずれ専務のように役員になると会社内に伝えたのだ。

 予想通りと言えばその通りだったが、彼は恐ろしく忙しくなった。
 ほとんど帰れないような日々が総会後続いていた。

 雫も心配して、何度か食事を作りに行ったくらいだ。

 その日、総務のフロアにひときわ綺麗な女の人がハイヒールの音を立てて入ってきた。
 横にはロマンスグレーの素敵な三つ揃えのスーツをかっこよく着た男性。
 人事部の方へ行く。

 すると、部長が出てきてお久しぶりでございます、と頭を下げる。
 三人で会議室へ入っていく。

 
< 37 / 73 >

この作品をシェア

pagetop