再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
亮の父親
亮ちゃんに捕まった夜、案の定熱が出た。
亮ちゃんに関係してから熱を出すことが増えて、母も心配しているようだった。
私としては、ほっとしたことで出た知恵熱のような気もしていた。
新田さんに優しくされて、一人で悩んでいたところで心がほっとして、さらに亮ちゃんからようやく話が聞けて緊張が解けて熱が出たと思う。
翌日の朝、まだ少しふらふらしたが熱は下がっていた。
忙しいこともあり、とりあえず出社した。
また、顔色の悪い私を部のメンバーは心配してくれた。
カスミには亮ちゃんとのことを話してあった。澄ちゃんにも話した。
そのせいで、部内では澄ちゃんが私の現状を理解して心配してくれていた。
昼休みにはカスミが励ましてくれていた。幸せだと思う。
でも、当事者である亮ちゃんから何のリアクションもないうちはどうしても心が晴れず、二人並ぶ姿を見るとさらに落ち込んだ。
新田さんからは定期的に連絡が来るようになった。
私も避けることはせず、キチンと返信し、今週末亮ちゃんのお父様と会う予定であることも話した。
金曜日。仕事をしていると、総務のフロアに亮ちゃんのお父様がふらっと現れた。
そして、キョロキョロと私達を見て、名札を見つけると、私を見てにっこりした。
近寄ってきて、笑顔で声をかけられた。
「久しぶりだね、雫ちゃん。大きくなったね。あ、ごめん。失礼だよな、こんな素敵な女性なのに。」
「とんでもありません。ご無沙汰しております。私もおじさまのお顔を忘れてしまっていて。ご挨拶もせず失礼しました。」
「ご両親はお元気ですか?」
「はい。おかげさまで元気です。あの、おばさまはお元気ですか?」
「ああ、そうだね。当時は妻がお世話になりました。今はアメリカにいるが、とても元気だよ。渡米してすぐは皆さんの話もよくしていた。今回も来たがっていたんだけどね。ちょっと用事があって残ったんだ。」
「そうですか……お会いしたかったので残念です。」