再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした

 「なら、大丈夫だ。亮は君をきちんと守るのが役目だ。私も亮にはきつく言っておくが、辛いときはすぐに言うんだよ。今度は私が雫さんのお父さんに恩返しする番だ。お嬢さんをしっかり守るよ。」

 嬉しくて、気づくと泣いてしまっていた。驚いた支社長はハンカチをおどおどと差し出した。

 すると、会議室のドアをどんどんと叩く音がする。
 「……見つかったかな?」

 いたずらっ子のような茶目っ気のある瞳でこちらを見ると、支社長は鍵を開けた。
 
 「父さん!雫を泣かせるなんて何言ったんだ?」

 「何も言ってないよ。大丈夫だ、落ち着け。」
 亮ちゃんは後ろから私を抱きしめて、お父様をにらみ返した。
 
 「雫さん。日曜日の約束はなしで大丈夫だね。久しぶりに亮とデートでもしてくるといいよ。私はひとりでゆっくりさせてもらうかな。あと、解決したらご両親にご挨拶へうかがうから、よろしくお伝えして下さい。」

 「……はい、ありがとうございます。」
 そう言うと、手を振って部屋を出て行った。バタンとドアの閉まる音がした。
 
 「雫、何言われた?」
 亮ちゃんは、青い顔をして私を不安げに見た。

 「……大丈夫。それより、ここでこんなに騒ぎになって、どうしたらいいか……」

 総務と人事の間にある会議室。すでにみんなに見られた。

 「聞かれたら公表してもいいように父さんにも協力を依頼してあるんだ。雫のこと、反対はされていない。」

 「そうね。そう言って下さったわ。」

 「そうか。じゃあ、とにかく後でね。連絡するよ。」

 そう言うと、先に出ていった。

 
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