再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
「雫にそんなこと求めてない。英語だって、徐々にできるようになる。俺だってアメリカに行くとは決まってない。」
「何を言ってるのかしら?貴方の今のお仕事は何?私は何をしているの?私の代わりを彼女がするなら出来て当たり前でしょ。それとも何?結婚しないのに私をずっと貴方の側に置いて、どうするの?」
ふたりの声が大きくなり、カフェでの視線が痛い。
「あ、あの……ここでする話ではないと思います。人目もありますし……」
はー、と亮ちゃんが大きなため息をつき、席を立った。
「優樹菜。今日はここまでだ。話があればまた聞くが、俺の決意は変わらない。父にも了承を得ている。そちらの社長には父から話がが先に行くはずだ。すまないが、了承してくれ。お前のためでもある。」
「……亮。勝手過ぎるわ。代償は払ってもらう。私も簡単には引けないから。」
そう言うと立ち上がってきびすを返しカフェを出て行った。
その後、いたたまれなくてホテルを出ようとしたら、上に部屋を取ってあるという。
手を握られてそのままエレベーターへ。
この間と同じ部屋へそのまま連れて行かれた。
部屋を入るとぎゅっと抱きしめられた。
そのままキスをされて、触られると亮ちゃんを求める気持ちが私の中からもあふれてしまい、
ふたりで倒れ込むようにしてベッドへ移動した。
時間を忘れて愛し合い、しばらくぶりのお互いの身体を嫌というほど何度も味わった。
両思いだということが、こういう行為の幸せに直結すると感じた夜だった。
愛してると言われ、愛してると言う。障害があると燃えるとよく言うが、それもあるかもしれない。
亮ちゃんと離れたくないとすがってしまいそうになる。
原田さんに言われたことも傷となって残った。それをかさぶたにしてくれるのは、彼の身体と言葉だった。
何もかも忘れて、抱き合った。
この後起きることを全く想定していないわけではなかったが……。その日は忘れたかった。