再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
side 亮
ホテルでカーテンを照らす朝の光に目が覚めた。
隣には雫が眠っている。
夕べは無理をさせてしまった。
最近抱いていないこともあり、やっとこういう時間が持てたという安心感もあり、歯止めがきかなかった。
でも、彼女も乱れてすがってきた。本当に可愛い。
昔から可愛かったが、自分のものにしてからはまた違う意味での美しさや妖艶さを見せてくれるようになり、こちらが虜になっていると自覚はある。
彼女にどうしても会いたくて、異動を口実にやっと日本へ帰国した。
思いの丈を伝えて両思いになったまでは良かったが、ライバルも多いと知り、本当に焦った。
その上、まさか優樹菜がウチの会社に転職して日本に来るなんて聞いていなかったのではめられたと気づいたときには遅かった。
父は俺の決意を耳の隅で聞いてはいたが、優樹菜以降特別な女性を作っていない俺を優樹菜に振られたと思っていたらしい。
違うと説明したときにはすでに縁談話が進んでいた。驚いた父は話を聞いた母から叱られたらしい。
母は、昔から俺が雫をかわいがっていたことや、楓に告白されて雫が好きだと言えずに終わっているのを陰で見て気づいていた。
雫も俺に気があるのはなんとなくわかっていた。
だが、楓の前では常に妹として気を張っている様子を見るにつけ、楓のことが片付かないとどうにもならないとわかっていた。
だからこそ、楓の告白を断ったときに、予想以上の楓の様子を見て、雫に手が出せなくなってしまった。
おじさんやおばさんにも申し訳なく思ったのもある。
ただ、雫の両親も雫の気持ちを知っていたようで、だからこそおじさんはウチの会社を雫に勧めたんだろう。
雫をやっと自分のものに出来たのに、すぐに優樹菜が来日して、仕事上のパートナーとなった。
しかも、社内では婚約者という噂を流している。
聞かれても彼女は否定するどころか匂わせるような話し方をする。
忙しい時期でもあり、挨拶回りや部下の選定などやることは山のようにあり、平日も土日もない生活がしばらく続いた。
疲れもあり、雫のことが気がかりだったのに、構ってやれなかった。それもいいわけだ。
問い詰められてもすぐには優樹菜のことを追い出せるほどの余裕がなかった。
仕事優先したのは自分の弱さだ。