再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
思いも寄らぬことⅠ
今日は、役員室で原田コーポレーションの社長とうちの社長や支社長が話し合ったと聞いている。
昼休み。
久しぶりに社食へ下りた。
こそこそ話をされているのもしょうがないと割り切る。
カスミが周囲を睨んで、静かになる。
「ありがとう。大丈夫だよ、そのうち何とかなるから。」
「雫はさ、一体何キロ痩せた?何か面痩せしたのかと思ったけど、かなり痩せたよね。大丈夫なの?」
「うん、過激なダイエットってとこかな。今世紀最大の下げ幅を記録致しました。」
苦笑いを浮かべたカスミがトレイを回してくれた。
ぽんと背中を叩く手がある。
振り向くと新田さん。
「新田さんたら、それでなくても人目について私が躍起になって雫を守っているって言うのに、火に油を注ぐようなことしないで。」
カスミは怒りに満ちた目で新田さんを睨んだ。
「おー怖い。同じ一課で仲良くしていたのに、その言い草はないんじゃないか?」
「ふざけてる場合ではありません。」
ふたりは日替わり、私はうどんを頼んで、端っこのテーブルへ。
ジロジロ見られても、手を振り返す余裕が新田さんにはある。
どこのアイドル?さすがです。
座ると小声で私に言った。
「亮さんから連絡ない?」
「はい。まだ何も。」
「ふーん。おそらく、思いも寄らぬ方向に話が進んでるかも。用意していた武器が必要なかったらしい。俺が仕込んでおいたやつ。必要なら俺も呼ばれる予定だったんだ。連絡ないからさ。」
カスミが頭をひねって答えた。
「それって、戦わなくても良くなったって意味ですか?いい方向なの?」
「花崎さんのことで相手が取引を止めてくるようなら、こちらも武器を見せる予定だった。だが、そうはなっていないということだ。」
自分のことで、会社の重大な取引に関係してくるなんて考えるだけで怖い。
また、背中をポンポンと優しく叩く手。
「ほらほら、大丈夫だからスマーイル。」
人差し指をほっぺの横に持っていき、私を笑わせる新田さん。
本当に。いい人だな。
亮ちゃんいなかったら、絶対に落ちてたと思う。
カスミが信じらんないと言いながら、新田さんを見ている。