再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
「……なんだか、優樹菜さんが本当に納得しているのかいまいち信じられないけど、丸く収まったなら安心した。」
「実は、原田コーポレーションとの取引がうまくいかなくなった場合の保険として新しい他の会社との取引を根回し済みだった。心配はいらなかったんだよ。」
「昼休みに新田さんから少し聞いているの。励ましてくれたんだ。」
「……ちっ、あいつ。相変わらずうまいな。」
「本当に助かる。冗談言って笑わせてくれたりして……。」
「雫、新田がいいとか言うなよ?」
「さあーどうでしょうね……。」こくんと頭をかしげてみる。
亮ちゃんは、私の腕を引いて抱きしめた。
「やめてくれ。心臓が止まる。」
亮ちゃんの胸を押し返して、告げた。
「本当に心臓が止まることが起きるかも知れないよ。」
亮ちゃんは、青くなって固まっている。
「……なんだ、何かあったのか?」
「落ち着いて聞いてね……私、赤ちゃんが出来たみたいなの。」
亮ちゃんは、びくっとして私を見つめた。
「ほんとうか?病院行ったのか?」
「ううん。お姉ちゃんが実は妊娠五ヶ月なの。私の体調を心配したお母さんがお姉ちゃんを呼んで、検査薬使って調べてくれた。さっきわかったところなんだ。病院は明日会社を休んでお姉ちゃんの行っている病院を紹介してもらうつもり。」
震える手でそうっと私を抱きしめると、肩口に頭をつけた。
「夢みたいだ。ありがとう雫。ちょっと予想外だったけど、運命なんだろう。嬉しいよ。本当に俺のものになったな。」
「亮ちゃん。私をお嫁さんにしてくれる?」
亮ちゃんは、私の頬を両手で挟むと、にっこりした。
「雫。順番が違ってごめん。しかもお前に先に言わせてしまった。俺の所に来て下さい。愛してるよ、雫。」
「良かった。会社の結末が違っていたら、妊娠したこと言わないつもりだった。」
「何言ってるんだよ?俺は、会社のことなんて何とでも出来る。そこは信用して欲しい。これでもアメリカで業績を上げて帰ってきたんだ。専務にだって負けてない。雫のことは何を置いても譲れない。その覚悟は父にも言ってあったし、父もそのつもりだった。」