再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
「……もちろん、信じてたよ。でも、体調が悪かったせいもあって、前向きに考えられなくなってた。さっきお姉ちゃんに一喝された。亮ちゃんに言わないなら自分が言うって。亮ちゃんのこと蹴るとか言ってたよ。」
思い出して、ふふふと笑い出してしまった。
「ご両親はこのことご存じなのか?」
「お母さんにだけ話すって言ってたけど、亮ちゃんからプロポーズされていないから心配してお父さんに話しちゃうかも知れない。」
「それはまずいな。すぐに、結婚の申し込みと、妊娠させた謝罪に行かないと。」
「明日でいいよ。明日大丈夫?」
「夜、必ず伺うよ。おそらく父も一緒に。ご両親の予定を聞いておいてくれ。」
「多分、用事があってもキャンセルすると思う。待ってるね。病院行ったら連絡する。」
「俺が付いていきたい。でも、楓が一緒に行ってくれるなら任せた方が、雫は安心かもな。」
「そうだね。これからは病院何回も行くことになるだろうし、その時にお願いします。」
「はー、突然色々あって、心臓がバクバクするな。雫、身体大切にしてくれ。その体調不良はつわりなんだな?病気じゃなくて良かった。実は心配していたんだ。病院に連れて行こうかと思っていた。」
「うん。最近吐き気もあって、病院行けば?って昼言われて考えてたところだったの。」
「昼って、また新田?」
「え?新田さんと同期のカスミだよ。」
「くそー、先越されてばっかじゃんか。まじ、悔しい。でも、これからは仕事一段落するから恐らく雫のことをみてやれる。何でも相談しろよ。ひとりで抱えるなよ。ストレスは赤ん坊にも良くないぞ。」
ぎゅっと抱きしめて、顎を捉えてキスをする。
何度か繰り返すと深いキスに変わる。むさぼるようにキスをして、離れた。
「……いつの時の子供だろ?」亮ちゃんが、つぶやく。
「やめてよ、もう。」
「何、真っ赤になってるんだよ。何ヶ月かわかるんだから、いつの子か大体分かるだろ。雫とあまりそういう時間持ててなかったしな。いや、一応避妊してたのにと思ってさ。突然でほんとにごめんな。驚いただろ。」
「私もそういうことがあるかもしれないのは、子供じゃないんだからわかってるし、亮ちゃんとの子供なら嬉しいよ。」
「雫……」
また、亮ちゃんが抱き寄せる。
しばらくしてようやく離してくれた。明日連絡すると言って別れた。
家に帰ると、すでに十時だった。
でも、両親が起きてお姉ちゃんと待っていた。
やはり、話してしまったようだった。お姉ちゃんがごめんと手を合わせてる。
「雫。遅い時間だが、報告してもらおう。心配だからな。体調は大丈夫か?」
お父さんはリビングの向かいのソファーにお母さんと並ぶとお姉ちゃんは私の隣に座った。
「うん、大丈夫。今、亮ちゃんと会って聞いてきました。全て解決したので、私と結婚したいそうです。明日、ご挨拶に来ますと言っていました。夜になるけど、お父様も一緒に来るそうです。」