再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
「はい。そうです。あの、亮ちゃんはアメリカにしばらく行かないんですよね?」
お姉ちゃんがズバッと聞いた。
「……こら、楓!」
お父さんが腰を浮かした。
「そうですね。こちらで重要なポストについたので、しばらくは日本でしょう。出張はあると思いますが。海外相手の部署ですので。亮の将来については、社長である兄と、甥の専務が考えていることがあるようで、私も今後本人の成長次第で相談しながらになります。雫さん、あまり心配しないでね。あちらには妻もいますし、雫さんがしばらく一緒に住むことができるくらいの広さの家だ。妻は昨日電話で話したが、雫さんとのこと本当に喜んでいた。ご両親にも一緒に頭を下げたいと言っておりました。そしてよろしくお願いしますと伝えて欲しいと言われています。」
父が支社長をじっと見て話し出した。
「高野さん。30年くらい前にお見えになったとき、なんとなくこんな将来になるのではないかと私は実は思っていました。亮君を見たときからウチの子のどちらかと縁ができるのではないかとピンときたのです。亮君はとても良いお子さんだったし、まあ、色々ありましたが雫がそちらに入社できたのも運命でしょう。ちょっと感慨深いものがあります。」
「……ありがとうございます。私は妻や子供のことも花崎さんに甘えてしまって、お返しすることが出来ていない。これからは、私の番です。どうか何でも言って下さい。そして、雫さんのことは私の命に代えても守ります。」
「父さん、その台詞は俺の台詞だよ!プロポーズじゃないんだから。雫の相手は俺だから。」
「いや、そのくらいの気持ちだと言うことを花崎さんにお伝えしたいんだよ。」
「いいなー、雫。私が亮ちゃんと結婚してたらセレブになれたのにな。あーあ、亮ちゃん逃がした魚は大きいよー。」
呆れた顔をしてお姉ちゃんを見る亮ちゃん。
「……楓。お前相変わらずだな。まあ、そのあっけらかんとしたところがお前のいいところだからな。楓も、しかし綺麗になったな。」
「そう?雫と結婚してなかったら、やっぱり後悔して私にした?」
「なあ、雫。楓の中身は何も変わらないな。変わったのは表面の顔だけだ。俺はだまされない。」
「ひどーい、どういう意味よ!」
支社長はあっけにとられて見ている。
父と母は、お姉ちゃんの暴走に慣れているので、恥ずかしいのか横を向いている。