再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
噂をすれば秘書室の人と一緒に原田さんが入ってきた。
こちらに気づくと、真っ直ぐ向かってくる。
周りが気づいて静かになった。
カスミが顔をこわばらせて私を守るように手を握る。
「花崎さん。妊娠されたそうね。おめでとう。正直、専務秘書への異動が決まってない段階で聞いていたら私も自分を保てたか心配だったけど、タイミングがお互い良かったようね。」
私も立ち上がって、原田さんに言った。
「ありがとうございます。私も予期しない事態で、驚いています。高野課長のことは申し訳なく思います。これからは、原田さんと親しくお仕事上も出来たらなと思います。海外のことや英語もできないですし、色々教えて下さい。よろしくお願いします。」
原田さんは、じっと私を見ると、ため息をついた。
「……あなた、本当たいした人なのね。私とは違うわね。ようやく納得したわ。こちらこそよろしく。」
きびすを返して行く彼女を他の秘書は苦笑いして見つめると、私に向かって微笑んでくれた。
「……はー、びっくりした。」カスミがつぶやく。
「そうだね。なんとかなった。良かった。」
「……雫。本当にえらいね。また、尊敬したよ。」
「え?」
すると、新田さんが後から現れて隣に座る。
「本当だ。惚れ直したぞ。」
「……。」
「もう、新田さんどこから来たの?」カスミがかみつく。
「……宇宙から。」
「うそつけ。さっきまで外出でいなかったでしょ。」
「カスミ君。君はうるさい。」
「新田さん、色々ありがとうございました。」
私は頭を下げた。
「やめてくれよ、妊娠したって朝聞いて、納得するところもあれば腹の立つこともあり、複雑だったんだ。お祝いを言うのはもう少し待ってね。原田さんのようにすんなり割り切れないんだよ俺は。」
「カスミと新田さんには本当に支えてもらって、感謝しかないです。」
「もうやだ、雫ったら。友達じゃん。」