最後の詰みが甘すぎる。
「俺に勝ったら服でも靴でも好きな物を買ってやる」
「……言ったね?」
棋士は個人事業主。収入は対局数と獲得賞金に比例する。年間四十以上の対局をこなす上にいくつもの大会で優勝している廉璽は賞金ランキングの上位ランカーだ。その年収は大企業の会社役員と遜色ない。
しかも使い所は圧倒的に少ないときている。柚歩の見たてによれば、相当溜め込んでいるはず。
「超お高いブランドバッグ買わせてヒーヒー言わせてやるんだから……!!」
「ククッ。そうこなくっちゃ」
思惑通りの展開になり廉璽はニヤリと笑った。
しかし、意気込みだけで廉璽に勝てるはずもなく。
柚歩は結局、三戦してすべて負けてしまった。
指し終わる頃には日がどっぷり暮れていた。これでは買い物どころの話ではない。