最後の詰みが甘すぎる。
「結婚の予定があるのか?」
「あのねえ……。例えばの話でしょう?もし彼氏がいるなら金曜の夜に家にいないから」
生まれてこの方彼氏がいたことなんてございません。
ハッキリ物を言う性格が仇をなしているのか、父譲りのごくごく地味な顔面のせいなのかはわからない。
ああ、なぜ自分で自分の傷を抉るような台詞を吐かないといけないのか。
「そうか……そうだよな」
あからさまにホッとされるとそれはそれでムカつく。
その後も対局は続いたが、柚歩は日を跨ぐ前に投了した。投了すると早く帰れと廉璽を追い立てる。
「ほら!!早くホテルに帰って寝なよ!!万が一寝坊でもしたら困るでしょ?」
「柚歩」
「……なに?」
柚歩は不機嫌丸出しで眉を上げた。
ご要望通り対局もしたのに、まだ不満があるとでもいうのか?
こちとら、どうせ彼氏なんていないだろうと思われていることをまだ忘れてはいない。
「いや、なんでもない……。今度来た時に話す」
「ほら、さっさと靴を履く!!」
柚歩は呼んでおいたタクシーに廉璽を押し込むとバイバイと手を振った。
その夜はひと仕事終えた充実感でぐっすりと眠りについた。