最後の詰みが甘すぎる。
「ま、待って……。私、こういうこと初めてで……」
「俺も初めて」
将棋ばかりしていたらそうなるかと妙に納得する。廉璽は追い討ちをかけるように柚歩の耳元で囁いた。
「こういうことしたいって思ったのも柚歩が初めてだから」
照れ臭そうに腕の中に閉じ込められ、柚歩の中で何かが音を立てて崩れた。
常識とか、理性とか、意地とか。多分、そんな類のものだ。
これが将棋だったら既に詰みの状態だ。たたみかけるような光速の寄せに柚歩は自身の負けを認めた。
自分で敷いた布団の上にゆっくりと押し倒されていく。
「これ、どうやって脱がすんだ?」
「いい……。じ、自分で脱ぐ……」
パジャマにしているオールインワンと就寝用のブラトップを廉璽の目の前で脱いでいく。
廉璽が今か今かと待ち侘びているのがすぐそばで感じ取れた。
見られていると思うと余計に緊張する。柚歩はもたつきながらも、ショーツ一枚の姿になった。
「れ、廉璽くんも脱いでよ」
初めて同士のおぼつかないやりとり。手探りだからこそいちいちドキドキする。
廉璽は請われるままにスウェットを脱いだ。
将棋漬けの生活を送っている廉璽の身体は痩せてはいたが、それでも柚歩よりずっと大きく力強い男性のものだった。
服を脱ぎ捨て肌を合わせると、えも言われぬ心地よさに包まれる。
廉璽はたどたどしい手つきで柚歩を愛撫していった。
駒を弾く指が今は柚歩の胸の頂を優しく弾く。盤面を見つめる熱い瞳が、誰のものでもない無垢な身体を見下ろしていた。