最後の詰みが甘すぎる。
「柚歩……」
雄々しい欲求を持て余した廉璽がねだるように柚歩の名前を呼んだ。柚歩はゆっくり頷いた。
「いっ……!!」
身体を押し開かれ思わず廉璽の背中に爪を立てる。
「柚歩……っ」
廉璽は無我夢中で柚歩の唇に噛みついた。
廉璽に普通の男性のような性欲があるなんて知らなかった。
柚歩の頭の中の廉璽は十二歳で成長がとまっている。
どうしてだろう。ひとつになれて嬉しいのに苦しい。柚歩は廉璽を受け入れながら啜り泣いた。
「痛いのか?」
「ううん、違うの……」
痛くて泣いているわけではない。
……怖かった。男女の関係になってしまったら、もう純粋に将棋を楽しむ二人には戻れないような気がした。
廉璽はそんな柚歩を優しく抱きしめ、目尻の涙を拭ってくれた。
ガタガタと窓が揺れる。春の嵐が吹き荒れる。二人が過ごした十六年間を全てさらっていくように。強く、強く吹いていた。