最後の詰みが甘すぎる。
(取れるかな、これ……)
昨夜とは打って変わって快晴になった翌朝、柚歩は破瓜によって汚れたシーツを洗面所で洗濯していた。
親のいない間に男性と睦み合い、シーツを汚して洗濯するなんて、とんだ親不孝者な気がする。
それとも相手が他ならぬ廉璽なら母も喜ぶのだろうか。
大事に守ってきた覚えもないけど、初めてが廉璽で嬉しかったのは柚歩も同じだ。
(避妊しなかったけど大丈夫だよね……?)
この家に避妊具が常備されているはずがない。もとより廉璽にそこまで気が回るはずもない。
柚歩の月経の周期はほぼ一定だし、よほどのことがなければ三日後にはやってくる。妊娠の可能性が低い日でよかった。
(ん?待てよ?万が一赤ちゃんができてた場合、その子はトップ棋士二人の遺伝子を受け継ぐ最強の頭脳をもった赤ちゃんってこと……?)
よからぬ妄想に柚歩はブンブンと首を横に振った。
(何を考えているのよ、私……!!)
叶いもしない夢に意味はないのに、何を期待しているのだろう。
「柚歩、腹減った」
廉璽から声を掛けられた柚歩はギクンと肩を揺らした。
「き、着替え終わったの?」
「生乾きだけどな」
「嵐の中、突然来る方が悪いんだからね……」
スーツが乾かなかったのは、決して柚歩のせいではない。
「そういえば何時の新幹線に乗るの?」
「九時の飛行機」
話が微妙に噛み合わず、ん?と首を傾げる。