スウィートメモリー💝
「何って?」

「何人かいたよ。愛來見てから『玉砕覚悟で先に告るべきか』って迷走してる男子」

「ま,まさか……」



あははと笑うと,あずみは肩を竦めた。



「まぁ,いいけどね。頑張れ,愛來」



あずみはグッと拳をつくって,胸の辺りで引く。

私ははにかんで,うんと答えた。



「でも,どうして分かったの? 私の好きな人が,その,亜季だって」

「分かりやすいの。いっつもチラチラしてるし,楽しそう。それに,亜季だけでしょ? 名前呼びなのにわざわざさん付けしてる男子なんて」



確かに。

誰かが亜季を探してる時は,『亜季,あっちにいたよ』って言えるのに。

本人を前にすると,たまに『亜季さん』って声をかけちゃう。

亜季はどっちで呼んでも特に気にしてないけど,私には亜季さんなんて違和感だらけ。



「万が一フラれても,その穴を埋めるだけの愛を込めたチョコレートあげるから!」



カラカラと笑ったあずみ。

告白する前に,それも当日にフラれる話をしないで欲しいと言うのがほんとの所。

こんな話題で自分がからかわれる日が来るなんて思わなかった。



「フラれないとくれないの?」



ちょっと拗ねたように見上げる。



「んーん,友チョコはそれであるから」

「……私も」

「よし,今渡しちゃうか」



あずみはそう言うと,自分の席まで戻って。

がさがさと漁ると1つの袋を持ってきた。



「ハッピーバレンタイン。告白,成功しますようにっ。ほら,教科の先生来る前に仕舞っちゃって」

「うん,ありがと。心強いお守りだ。こちらこそどうぞ!」

「ありがとう。じゃあ,そろそろ」

「うん。また後でね」
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