君に向けたプロトコル
「うわっ!まじかっ!」
カフェのオープン時間に合わせて来たのだが、オープン前から長蛇の列を成しており、驚きのあまり前川くんが声を上げた。
カフェの外観はマカロンちゃんのサポートキャラである『ウサ親父が開いたカフェ』というコンセプトに合わせた装飾が至る所にされている。
…前川くんの言う通り、すごい行列。
「オープン前からこんなに並んでいるなんて、すごい人気だね。30分は並びそうだけど、黒瀬さんは大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
「なんか、黒瀬さんって華奢だから立ってるだけでも貧血で倒れそうだよね~。」
「普段、引きこもってるから体力には自信ないけど、30分並ぶくらい平気だよ。」
前川くんと会話するのもだいぶ慣れてきた一葉は、心配させない様ににこりと笑って見せた。
「うわっ、黒瀬さんって笑うとほんとマカロンちゃんみたい!」
「…そんなこと言われると笑いづらくなる。」
「ごめん、ごめん。僕、体力には自信あるから辛くなりそうなら寄りかかってて平気だからね。」
「…ありがとう。」
私が今まで関わってきた男子と違い、前川くんはとても優しい。
お店の壁に沿って並びながら、小窓から店内を覗き込んでいると、とてもワクワクして待っている時間も苦ではなかった。
お兄と喜くんも主催者だから、きっとこの会場のどこかにいるんだろうな…。
と思いながらあたりを見渡すと家族の絆なのだろうか…。タイミングよくこちらに歩いてくるお兄とバチっと目が合った。
お兄の後ろには楽がいる。
えっ?楽も今日はこのイベントの手伝いしてるの?
「いちよーーう!来てくれたんだ!ありがとな~!」
首からスタッフ証を下げた一樹は一葉に気づくと大きく手を振りながらカフェに並ぶ行列に近づいてきた。もちろん楽も一緒だ。
「知り合い?」
「…うん。兄です。」
「えっ?お兄さん、このイベントの関係者だったの??」
イベント関係者の身内と知って前川くんは目を丸くして驚いていた。
「一葉、珍しく可愛い格好してるから一瞬わからなかったよー。それ、一華の服でしょ?似合ってんじゃん!なぁ、楽も可愛いと思うだろ?」
一樹は一葉の変貌ぶりに驚き、少しだけ興奮気味だった。
「…あぁ。流石一華だね、一葉の似合う服を知ってる。」
一華を思い出しているのか、にっこり微笑むので、一葉は良い気がしない。
ちょっと!そこは私を褒める所じゃないの?
お姉ちゃんの事を思い浮かべて褒めるなんて…。なんかムカつく!!
「それにしても1人でよく来たね〜。来ないかと思ったよ。」
「友達と来たよ。」
「えっ!?一葉って友達いたの?てか、友達はトイレ?」
「ここにいるよ。」
「「えっ!?」」
今度はお兄と楽の声が揃った。
「友達ってもしかして…。」
一樹は一葉から視線を少し上げ、まさかと思いながら隣に立っている爽やかメガネ男子を指差した。
「初めまして…。同じ高校の前川 陽太です。」
と、少し気まずそうに2人に挨拶をした。
「前川くん、こっちが私の兄で隣がご近所の砂川楽さん。お姉ちゃんと同じ学年で幼馴染なの。」
「おっ男??」
一樹は驚きのあまり声が裏返っていた。
「すみません…。男なんです。僕。」
前川くんはすっかり苦笑いをしている。
「お兄、なんか、失礼だよ。」
一葉は軽く膝で一樹の横腹を突いた。
「おぃ、陽太ってもしかして…、お前の手に書いてあった『pocapoca_hinata_1224』??」
小声で楽が一葉に問いかけ出来たので同じトーンで返事をする。
「そうなの…。見られたって学校の人。」
「はぁー……。なんだよ。男なのかよ…。」
「何よっ、2人とも!私に男友達がいたら問題でもあるの?」
初めて友達と出掛けてると言うのに周りがこんなんじゃ、良い気がしないし前川くんにも悪い。
「あはは、2人とも黒瀬さんの事を心配てるんだよ。僕たちはまだ知り合ったばかりでそんな仲ではないです。それに帰りはちゃんとご自宅まで送るつもりです。」
「えっ!家まで送ってくれなくても大丈夫だよ!ちゃんと迷子にならずに帰れるよ?」
「もしかして黒瀬さんって天然!?みんな迷子を心配してるんじゃないよ(笑)」
「はぁー…。一葉は俺が連れて帰る。ここ出る時電話して。それでいいよな?カズ兄?」
「あぁ、それはそれで別の意味で心配だが…。まぁ、俺は構わないが…。」
お兄は様子をうかがう様に前川くんをみる。それに気づいた彼は、
「僕も大丈夫ですよ。今日の目的はこのイベントですし。」
と言った。
「じゃあ一葉、出る時電話しろよ。」
楽は私の頭を撫でると、お兄と2人で仕事へと戻っていった。
カフェのオープン時間に合わせて来たのだが、オープン前から長蛇の列を成しており、驚きのあまり前川くんが声を上げた。
カフェの外観はマカロンちゃんのサポートキャラである『ウサ親父が開いたカフェ』というコンセプトに合わせた装飾が至る所にされている。
…前川くんの言う通り、すごい行列。
「オープン前からこんなに並んでいるなんて、すごい人気だね。30分は並びそうだけど、黒瀬さんは大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
「なんか、黒瀬さんって華奢だから立ってるだけでも貧血で倒れそうだよね~。」
「普段、引きこもってるから体力には自信ないけど、30分並ぶくらい平気だよ。」
前川くんと会話するのもだいぶ慣れてきた一葉は、心配させない様ににこりと笑って見せた。
「うわっ、黒瀬さんって笑うとほんとマカロンちゃんみたい!」
「…そんなこと言われると笑いづらくなる。」
「ごめん、ごめん。僕、体力には自信あるから辛くなりそうなら寄りかかってて平気だからね。」
「…ありがとう。」
私が今まで関わってきた男子と違い、前川くんはとても優しい。
お店の壁に沿って並びながら、小窓から店内を覗き込んでいると、とてもワクワクして待っている時間も苦ではなかった。
お兄と喜くんも主催者だから、きっとこの会場のどこかにいるんだろうな…。
と思いながらあたりを見渡すと家族の絆なのだろうか…。タイミングよくこちらに歩いてくるお兄とバチっと目が合った。
お兄の後ろには楽がいる。
えっ?楽も今日はこのイベントの手伝いしてるの?
「いちよーーう!来てくれたんだ!ありがとな~!」
首からスタッフ証を下げた一樹は一葉に気づくと大きく手を振りながらカフェに並ぶ行列に近づいてきた。もちろん楽も一緒だ。
「知り合い?」
「…うん。兄です。」
「えっ?お兄さん、このイベントの関係者だったの??」
イベント関係者の身内と知って前川くんは目を丸くして驚いていた。
「一葉、珍しく可愛い格好してるから一瞬わからなかったよー。それ、一華の服でしょ?似合ってんじゃん!なぁ、楽も可愛いと思うだろ?」
一樹は一葉の変貌ぶりに驚き、少しだけ興奮気味だった。
「…あぁ。流石一華だね、一葉の似合う服を知ってる。」
一華を思い出しているのか、にっこり微笑むので、一葉は良い気がしない。
ちょっと!そこは私を褒める所じゃないの?
お姉ちゃんの事を思い浮かべて褒めるなんて…。なんかムカつく!!
「それにしても1人でよく来たね〜。来ないかと思ったよ。」
「友達と来たよ。」
「えっ!?一葉って友達いたの?てか、友達はトイレ?」
「ここにいるよ。」
「「えっ!?」」
今度はお兄と楽の声が揃った。
「友達ってもしかして…。」
一樹は一葉から視線を少し上げ、まさかと思いながら隣に立っている爽やかメガネ男子を指差した。
「初めまして…。同じ高校の前川 陽太です。」
と、少し気まずそうに2人に挨拶をした。
「前川くん、こっちが私の兄で隣がご近所の砂川楽さん。お姉ちゃんと同じ学年で幼馴染なの。」
「おっ男??」
一樹は驚きのあまり声が裏返っていた。
「すみません…。男なんです。僕。」
前川くんはすっかり苦笑いをしている。
「お兄、なんか、失礼だよ。」
一葉は軽く膝で一樹の横腹を突いた。
「おぃ、陽太ってもしかして…、お前の手に書いてあった『pocapoca_hinata_1224』??」
小声で楽が一葉に問いかけ出来たので同じトーンで返事をする。
「そうなの…。見られたって学校の人。」
「はぁー……。なんだよ。男なのかよ…。」
「何よっ、2人とも!私に男友達がいたら問題でもあるの?」
初めて友達と出掛けてると言うのに周りがこんなんじゃ、良い気がしないし前川くんにも悪い。
「あはは、2人とも黒瀬さんの事を心配てるんだよ。僕たちはまだ知り合ったばかりでそんな仲ではないです。それに帰りはちゃんとご自宅まで送るつもりです。」
「えっ!家まで送ってくれなくても大丈夫だよ!ちゃんと迷子にならずに帰れるよ?」
「もしかして黒瀬さんって天然!?みんな迷子を心配してるんじゃないよ(笑)」
「はぁー…。一葉は俺が連れて帰る。ここ出る時電話して。それでいいよな?カズ兄?」
「あぁ、それはそれで別の意味で心配だが…。まぁ、俺は構わないが…。」
お兄は様子をうかがう様に前川くんをみる。それに気づいた彼は、
「僕も大丈夫ですよ。今日の目的はこのイベントですし。」
と言った。
「じゃあ一葉、出る時電話しろよ。」
楽は私の頭を撫でると、お兄と2人で仕事へと戻っていった。