君に向けたプロトコル
姉の恋人と楽
珍しく今日は一華から呼び出しがあり、学校の帰りにショッピングモールで待ち合わせをしていた。
「今月、バイト頑張ったからデート用の服を買いたくて!ついでに一葉の服も買ってあげる!」
「えっ?私は部屋着があれば十分だよ…。てか、デート用って、お姉ちゃん彼氏いたの?」
「うふふっ、彼氏できちゃったー!」
「マジでっ!?」
「うん、マジよ!そのうち会わせてあげる!」
「ら…楽は知ってるの??」
「楽?知ってるよ!ずっと応援してくれてたから一番に報告しちゃった!」
…やっぱり、お姉ちゃんに好きな人がいるって分かってたんだ。
それなのに応援してたって…。次に会った時にはなんて声を掛けたらいいのか…。
一葉にとって楽の失恋は好機だが、片思いの辛さを知っている分、手放しでは喜べなかった。
「一葉もまたデートするかもしれないでしょ?」
「…どうなんだろう。この間の彼とは、と…友達だし。」
そうだ。前川くんが言っていたのはきっと友達として『好き』ってことだ。それなら納得できる。友達としてもっと好きになるということに違いない!友達がいないから勘違いするところだった。
「楽と一緒に帰ってきてたけど、楽は何か言ってた?」
「…あぁ、さすが一華だってお姉ちゃんのこと褒めてたよ。」
「それだけ?」
「うん。…お兄は可愛いって言ってくれたよ。」
「はぁ~っ?何それっ?あいつ馬鹿じゃないの?」
「…と、友達も可愛いって、似合ってるって言ってくれたし。お姉ちゃんに服借りて良かったと思う。ありがとう。」
「ふ~ん…。(屁たれめっ!)」
一華は納得しきれない表情をしていたが理由は一葉にはわからなかった。
そして、一華の好きなアパレルショップを何件か梯子し、だいぶ手荷物も増えたころ、スマホのカメラのシャッター音が近くで何度もなっていたが、二人は買い物に夢中でまったく気づかなかった。
恋人同士になれたの楽のおかげだからと、一華はちょっとおしゃれな革のペンケースを買うと、一葉に渡しておいてと頼み、彼氏との待ち合わせがあるからと駅で別れ、一葉だけ自宅に帰えることになった。
ブブッ
震えたスマホを見ると楽から『一華から連絡きた。今から駅に迎えに行く。』とメッセージが届く。
兄と同様に一華も妹に過保護でいた。楽はまだ一華の事が好きだから、言うことを聞いてしまうのだろう…。申し訳ないと思いながらも楽に会えるのは嬉しい。
普段、待ち合わせによく使う駅前のオブジェの前に移動し、楽を待つことにした。
「おいっ!!」
声のする方をみると楽が怖い顔をしてこちらを見ていた。
「楽、わざわざありがとう!」
「お前、ぼーっとしてんじゃねぇよ。」
怒りながらも、一葉に近づいて一華に買ってもらった荷物を黙って持つ。
「な…なんで怒ってるの?」
「今、お前の近くにいた男がお前の写真撮ってた。気づいてなかったのか?」
「そうなの?」
「俺の声で逃げてった…。お前、ほんと気を付けろよ。」
「うん。」
「分かったなら、行くぞっ。」
楽は一葉の手をつなぎ自宅へと歩き出す。幼いころから楽は一葉の手をよく繋いでいた。今もこうやってつなぐのは昔からの癖なのだろうと思っていたが止めたくなくて一葉はずっと指摘しないでいる。
「一華に彼氏できたの聞いたんだろ?」
「うん、すごく嬉しそうだった。…楽は平気なの?」
恐る恐る聞いてみる。
「まぁ、複雑な気持ちだけどな。」
やっぱり、一華のことを好きだったんだ。と楽の返事から察した。
「お前さぁ…。俺の気持ち、気づいてるよな…。」
「そりゃ、ずっとそばにいれば気づくよ。」
「だよなぁ…。他のやつも気づいてたし、お前だけ気づかないってことは無いか…。」
歩きながら、沈黙が続く。一葉は何か話さなくてはと思いながらも言葉が出ない。もっと自分にコミュニケーション能力があればと悔やまれる。
「…お前はどう思う?」
楽は立ち止まり一葉の顔を覗き込む。視線をそらさずに見つめられると返事をしないわけにはいかない。
「…ゆっくり、時間をかければ良いと思う。」
失恋って時が解決するって言うもんね!ベタな回答だけれど、恋愛経験の乏しい私にはこれくらいしか言ってあげられない…。
「ありがとう…。ゆっくり、時間をかけるよ。」
そういうと楽はにっこり微笑んで一葉を優しく抱きしめた。そして一葉は失恋の傷を慰めるかのようにそっと楽の背中に手を置いた。
「今月、バイト頑張ったからデート用の服を買いたくて!ついでに一葉の服も買ってあげる!」
「えっ?私は部屋着があれば十分だよ…。てか、デート用って、お姉ちゃん彼氏いたの?」
「うふふっ、彼氏できちゃったー!」
「マジでっ!?」
「うん、マジよ!そのうち会わせてあげる!」
「ら…楽は知ってるの??」
「楽?知ってるよ!ずっと応援してくれてたから一番に報告しちゃった!」
…やっぱり、お姉ちゃんに好きな人がいるって分かってたんだ。
それなのに応援してたって…。次に会った時にはなんて声を掛けたらいいのか…。
一葉にとって楽の失恋は好機だが、片思いの辛さを知っている分、手放しでは喜べなかった。
「一葉もまたデートするかもしれないでしょ?」
「…どうなんだろう。この間の彼とは、と…友達だし。」
そうだ。前川くんが言っていたのはきっと友達として『好き』ってことだ。それなら納得できる。友達としてもっと好きになるということに違いない!友達がいないから勘違いするところだった。
「楽と一緒に帰ってきてたけど、楽は何か言ってた?」
「…あぁ、さすが一華だってお姉ちゃんのこと褒めてたよ。」
「それだけ?」
「うん。…お兄は可愛いって言ってくれたよ。」
「はぁ~っ?何それっ?あいつ馬鹿じゃないの?」
「…と、友達も可愛いって、似合ってるって言ってくれたし。お姉ちゃんに服借りて良かったと思う。ありがとう。」
「ふ~ん…。(屁たれめっ!)」
一華は納得しきれない表情をしていたが理由は一葉にはわからなかった。
そして、一華の好きなアパレルショップを何件か梯子し、だいぶ手荷物も増えたころ、スマホのカメラのシャッター音が近くで何度もなっていたが、二人は買い物に夢中でまったく気づかなかった。
恋人同士になれたの楽のおかげだからと、一華はちょっとおしゃれな革のペンケースを買うと、一葉に渡しておいてと頼み、彼氏との待ち合わせがあるからと駅で別れ、一葉だけ自宅に帰えることになった。
ブブッ
震えたスマホを見ると楽から『一華から連絡きた。今から駅に迎えに行く。』とメッセージが届く。
兄と同様に一華も妹に過保護でいた。楽はまだ一華の事が好きだから、言うことを聞いてしまうのだろう…。申し訳ないと思いながらも楽に会えるのは嬉しい。
普段、待ち合わせによく使う駅前のオブジェの前に移動し、楽を待つことにした。
「おいっ!!」
声のする方をみると楽が怖い顔をしてこちらを見ていた。
「楽、わざわざありがとう!」
「お前、ぼーっとしてんじゃねぇよ。」
怒りながらも、一葉に近づいて一華に買ってもらった荷物を黙って持つ。
「な…なんで怒ってるの?」
「今、お前の近くにいた男がお前の写真撮ってた。気づいてなかったのか?」
「そうなの?」
「俺の声で逃げてった…。お前、ほんと気を付けろよ。」
「うん。」
「分かったなら、行くぞっ。」
楽は一葉の手をつなぎ自宅へと歩き出す。幼いころから楽は一葉の手をよく繋いでいた。今もこうやってつなぐのは昔からの癖なのだろうと思っていたが止めたくなくて一葉はずっと指摘しないでいる。
「一華に彼氏できたの聞いたんだろ?」
「うん、すごく嬉しそうだった。…楽は平気なの?」
恐る恐る聞いてみる。
「まぁ、複雑な気持ちだけどな。」
やっぱり、一華のことを好きだったんだ。と楽の返事から察した。
「お前さぁ…。俺の気持ち、気づいてるよな…。」
「そりゃ、ずっとそばにいれば気づくよ。」
「だよなぁ…。他のやつも気づいてたし、お前だけ気づかないってことは無いか…。」
歩きながら、沈黙が続く。一葉は何か話さなくてはと思いながらも言葉が出ない。もっと自分にコミュニケーション能力があればと悔やまれる。
「…お前はどう思う?」
楽は立ち止まり一葉の顔を覗き込む。視線をそらさずに見つめられると返事をしないわけにはいかない。
「…ゆっくり、時間をかければ良いと思う。」
失恋って時が解決するって言うもんね!ベタな回答だけれど、恋愛経験の乏しい私にはこれくらいしか言ってあげられない…。
「ありがとう…。ゆっくり、時間をかけるよ。」
そういうと楽はにっこり微笑んで一葉を優しく抱きしめた。そして一葉は失恋の傷を慰めるかのようにそっと楽の背中に手を置いた。