君に向けたプロトコル
【SIDE:楽】

帰宅の車の中でスマホが鳴った。
先ほどサーバーに仕掛け直した不正アクセスがあった場合に知らせるメールだった。

 …なんだよ、このまま帰れば一葉に会えたのに。

「兄貴、ラップトップ今ある?」

「ああ、後ろの席に置いてある。」

「ちょっと車停めて。」

善は楽に言われた通りに車を道路の左に寄せて停車した。

楽は後部座席からラップトップを取り、起動させるとスマホのテザリングをオンにして不正アクセスのあったサーバーにログインした。

「こいつ突然、無差別にアカウントを乗っ取り始めたなぁ。何をやってんだ??」

「何かおかしな事を始めそうなのか?」

「まだわからないが…。乗っ取りと投稿を繰り返してるなぁ…。」

 誹謗中傷でも拡散して嫌がらせでもしてるのか?

乗っ取ったアカウントのメッセージは全て同じアカウント宛に送られていた。

「『マカロンちゃん愛してる。』『マカロンちゃんは僕の物』って、チョコクラのファンの仕業か…。」

「何か、そいつヤバそうだな…。一応、親父に連絡しておくか…。」

善はスマホを取り出し電話を始めた。

…てか、このアカウントの数字って一葉の誕生日。『マカロンちゃん』宛てのメッセージ。…まさか。

SNSアプリを起動し管理者でログインすると送信先のユーザー画面を開き送られたメッセージを確認する。

履歴の古いものは好意を示す様な内容だが、後半は『裏切り者』と、ネガティブな投稿が沢山あった。そしてリンクとして貼られていた画像を見て確信する。

「兄貴!一葉が危ない!!!」

「はっ?どーゆことだ?」

「犯人は一葉をマカロンちゃんだと思い込んで狙ってる。俺が一葉との別れ際にしたキスで怒りをかったようだ。」

 …そして、最後に送られたメッセージ。

「一番新しいメッセージに『今から迎えにいくよ。』って投稿されていた!!急いでくれっ!!」

「まずいな…、今日は一華は女子会だし、一樹は接待で遅い。黒瀬のおじさんおばさんはうちの両親と旅行中だ。」

「ってことは、一葉は一人か!?」

楽は一葉に電話を掛けたが電源が切られているため、呼び出しのコール音すら鳴らなかった。

「…ったく!電話、電源が切られてやがる!犯人がやったのか!?」

喜は急いでウィンカーを出すと車を発車させ、黒瀬家へと向かった。
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