君に向けたプロトコル
【SIDE:一葉】
窓の外を風が吹き付け、ガタガタっと何かが揺れる音がした。
楽ってば、何でこういう時にいなのよっ!
いつもリビングでぐーたらしてるのにっ!
…そうか、お姉ちゃんに彼氏ができたんだもん、うちに来る理由がないのか…。
一葉は布団にくるまりながらベッドの上で丸くなっていた。
『ピーンポーン』インターフォンが鳴った。初めは怖くて無視していたのだが何度もしつこく鳴らされるので、二階の廊下にあるモニターから応答する。
「…はい。」
「マーカローンちゃーん。一人なのは知ってるよぉ~。約束通り迎えに来たよぉ…。」
やだっ!誰なの!?この男!!
全身に鳥肌が立つ。
無言でインターフォンの通話を切ると玄関のドアを開けようとしているのか、ガチャガチャと音を立てていた。
そうだ!警察!
部屋に戻ってスマホの電源を入れると、先ほどのSNSからの通知やどこで調べたのかメールがひたすら送りつけられ、なかなか通話画面を表示させることができない。手も震えているのでミスタップばかりしてしまう。
暫くすると玄関からドアを開けようとする音が止んだので、諦めたのかとホッとしたのもつかの間、リビングから『ガチャーンッ』とガラスの割れる音がした。玄関が静かになったのは男が諦めたのではなく別の侵入方法を探していたのだ。
「ま~かろぉ~んちゃ~~ん。」
今度はインターフォン越しではなく、明らかに室内から声がしていた。
ゆっくりと階段を上る家が軋む音がする。
こっちに来る…。
「どこにいるのぉ~。」
そうだ、電気!
一葉はどの部屋にいるかわからなくするため部屋の電気を消した。
これで少しは時間が稼げるはず。
そうだっ!トイレ!そこなら鍵が掛けられる!
しかし、恐怖のあまりに足が震えて立ち上がることすらできなかった。
男は順番に部屋の扉を開けて室内を確認している。
「もぉ~、この部屋しかないねぇ~。僕のま~かろぉ~んちゃ~~ん。」
男が部屋に入ろうとした時だった。
『ビーッビーッビーッ』『ウーーッウーーッ』『ファンファンファンッ』と外から様々な警報音が鳴り始め、同時に設置されている警告灯も光っていた。
「な…なんだ?この地域全体で警報の誤作動か?」
男は一葉の目の前で歩みを止め、キョロキョロと様子を伺っていた。
鳴りやまない警報音に近隣の住民たちも外へと集まり始めていた。
「黒瀬さぁ~ん?先ほどガラスが割れる大きな音がしたけれどいらっしゃるぅ~?」
異常な警報とガラスの音を聞いたお向かいのおばちゃんが様子を伺いに来てくれたので、男は焦り始めていた。
「マカロンちゃん、早く僕と一緒に行こう。」
薄気味悪い笑みを浮かべながら一葉に声を掛け、手を伸ばしてきた。『一緒に行くわけないでしょっ!』と叫んでやりたかったが恐怖で声が出なかった。
逃げることも出来ない…。叫ぶこともできない…。ただ部屋の隅で震えてるしかできなかった。
町の異常さからパトカーが数台集まる音がすると、男は舌打ちをしながらガムテープを取り出し抵抗する一葉の手を押さえつけ、口にガムテープを貼って叫べなくし、手首、足首と順番にガムテープを巻き付け一葉の自由を奪った。
身動きが取れなくなり、一葉が完全に諦めた時だった。
「一葉っ!!」
玄関のカギを開ける音とほぼ同時に楽が飛び込んできた。
楽っ!!!
楽は土足のまま一直線に一葉の部屋へと向かった。そして、その後に喜と警報音に集まってきた警察が続いた。
部屋の隅でガムテープを巻き付けられている一葉を見つけると、無謀なことに楽は男に飛び掛かり思い切り殴りつけた。
「お前、駅前で一葉を盗撮してたやつ!!!」
「んんーっ(楽ーっ)」
一葉の呼びかけに気づいた楽は側に駆け寄り、口に貼られたガムテープを剝がした。
「一葉、大丈夫か!?」
「楽ーーっ!」
泣き続ける一葉を楽は必死に抱きしめながら、巻き付けられたガムテープをはがしていく。
楽に殴られた男は喜と一緒に二階へ上がってきた警察に拘束されていた。
楽は一葉の着衣に乱れが無いことを確認すると、安堵の表情を浮かべた。
「最悪の事態には間に合ったみたいだな…。」
「楽…。来てくれてありがとう。」
「当り前だろ、お前の彼氏なんだから…。」
そういうと楽は思い切り一葉にキスをし、愛しそうに見つめる。
「へっ!?…ちょっと待って、誰が誰の彼氏?」
キョトンとした顔で一葉は楽を見つめる。
「誰が誰のって…。俺はお前の彼氏だろ?」
「…いつから?」
「おいっ!いつからって何だよ!あん時、俺は勇気を出して…。」
「くくくっ…。お前ら結局どうなってんの?」
二人のやり取りを見て喜が笑っていた。
「ただいま~。ちょっと!外にパトカーすごいんだけど!一体何があったの??」
一華が帰ってきて、人が集まる一葉の部屋を覗き込んだ。
「喜くんまで一葉の部屋にいるし…。ほんと何??」
「一華、説明するからリビングで飲み物淹れて。怖い思いした一葉ちゃんが安心できるようなやつ。」
「あ、うん、わかった。」
一華は荷物と上着を自分の部屋に置くとリビングへと喜と一緒に降りて行った。
「一葉、立てるか?」
「うん、何とか。」
楽は一葉の手をとるとゆっくりと立ち上がらせた。
窓の外を風が吹き付け、ガタガタっと何かが揺れる音がした。
楽ってば、何でこういう時にいなのよっ!
いつもリビングでぐーたらしてるのにっ!
…そうか、お姉ちゃんに彼氏ができたんだもん、うちに来る理由がないのか…。
一葉は布団にくるまりながらベッドの上で丸くなっていた。
『ピーンポーン』インターフォンが鳴った。初めは怖くて無視していたのだが何度もしつこく鳴らされるので、二階の廊下にあるモニターから応答する。
「…はい。」
「マーカローンちゃーん。一人なのは知ってるよぉ~。約束通り迎えに来たよぉ…。」
やだっ!誰なの!?この男!!
全身に鳥肌が立つ。
無言でインターフォンの通話を切ると玄関のドアを開けようとしているのか、ガチャガチャと音を立てていた。
そうだ!警察!
部屋に戻ってスマホの電源を入れると、先ほどのSNSからの通知やどこで調べたのかメールがひたすら送りつけられ、なかなか通話画面を表示させることができない。手も震えているのでミスタップばかりしてしまう。
暫くすると玄関からドアを開けようとする音が止んだので、諦めたのかとホッとしたのもつかの間、リビングから『ガチャーンッ』とガラスの割れる音がした。玄関が静かになったのは男が諦めたのではなく別の侵入方法を探していたのだ。
「ま~かろぉ~んちゃ~~ん。」
今度はインターフォン越しではなく、明らかに室内から声がしていた。
ゆっくりと階段を上る家が軋む音がする。
こっちに来る…。
「どこにいるのぉ~。」
そうだ、電気!
一葉はどの部屋にいるかわからなくするため部屋の電気を消した。
これで少しは時間が稼げるはず。
そうだっ!トイレ!そこなら鍵が掛けられる!
しかし、恐怖のあまりに足が震えて立ち上がることすらできなかった。
男は順番に部屋の扉を開けて室内を確認している。
「もぉ~、この部屋しかないねぇ~。僕のま~かろぉ~んちゃ~~ん。」
男が部屋に入ろうとした時だった。
『ビーッビーッビーッ』『ウーーッウーーッ』『ファンファンファンッ』と外から様々な警報音が鳴り始め、同時に設置されている警告灯も光っていた。
「な…なんだ?この地域全体で警報の誤作動か?」
男は一葉の目の前で歩みを止め、キョロキョロと様子を伺っていた。
鳴りやまない警報音に近隣の住民たちも外へと集まり始めていた。
「黒瀬さぁ~ん?先ほどガラスが割れる大きな音がしたけれどいらっしゃるぅ~?」
異常な警報とガラスの音を聞いたお向かいのおばちゃんが様子を伺いに来てくれたので、男は焦り始めていた。
「マカロンちゃん、早く僕と一緒に行こう。」
薄気味悪い笑みを浮かべながら一葉に声を掛け、手を伸ばしてきた。『一緒に行くわけないでしょっ!』と叫んでやりたかったが恐怖で声が出なかった。
逃げることも出来ない…。叫ぶこともできない…。ただ部屋の隅で震えてるしかできなかった。
町の異常さからパトカーが数台集まる音がすると、男は舌打ちをしながらガムテープを取り出し抵抗する一葉の手を押さえつけ、口にガムテープを貼って叫べなくし、手首、足首と順番にガムテープを巻き付け一葉の自由を奪った。
身動きが取れなくなり、一葉が完全に諦めた時だった。
「一葉っ!!」
玄関のカギを開ける音とほぼ同時に楽が飛び込んできた。
楽っ!!!
楽は土足のまま一直線に一葉の部屋へと向かった。そして、その後に喜と警報音に集まってきた警察が続いた。
部屋の隅でガムテープを巻き付けられている一葉を見つけると、無謀なことに楽は男に飛び掛かり思い切り殴りつけた。
「お前、駅前で一葉を盗撮してたやつ!!!」
「んんーっ(楽ーっ)」
一葉の呼びかけに気づいた楽は側に駆け寄り、口に貼られたガムテープを剝がした。
「一葉、大丈夫か!?」
「楽ーーっ!」
泣き続ける一葉を楽は必死に抱きしめながら、巻き付けられたガムテープをはがしていく。
楽に殴られた男は喜と一緒に二階へ上がってきた警察に拘束されていた。
楽は一葉の着衣に乱れが無いことを確認すると、安堵の表情を浮かべた。
「最悪の事態には間に合ったみたいだな…。」
「楽…。来てくれてありがとう。」
「当り前だろ、お前の彼氏なんだから…。」
そういうと楽は思い切り一葉にキスをし、愛しそうに見つめる。
「へっ!?…ちょっと待って、誰が誰の彼氏?」
キョトンとした顔で一葉は楽を見つめる。
「誰が誰のって…。俺はお前の彼氏だろ?」
「…いつから?」
「おいっ!いつからって何だよ!あん時、俺は勇気を出して…。」
「くくくっ…。お前ら結局どうなってんの?」
二人のやり取りを見て喜が笑っていた。
「ただいま~。ちょっと!外にパトカーすごいんだけど!一体何があったの??」
一華が帰ってきて、人が集まる一葉の部屋を覗き込んだ。
「喜くんまで一葉の部屋にいるし…。ほんと何??」
「一華、説明するからリビングで飲み物淹れて。怖い思いした一葉ちゃんが安心できるようなやつ。」
「あ、うん、わかった。」
一華は荷物と上着を自分の部屋に置くとリビングへと喜と一緒に降りて行った。
「一葉、立てるか?」
「うん、何とか。」
楽は一葉の手をとるとゆっくりと立ち上がらせた。