君に向けたプロトコル
…やばい。眠すぎる…。
昨夜は夕食の片づけを皆で済ませた後、一葉の部屋で楽と二人『チョコクラ3』を日付が変わるころまでプレイしていた。
しかし、あの短時間だけでは当然全ステージクリアできず、屋上の片隅でボッチご飯を終えたあと、ゲームの続きをするためにわざわざゲーム端末を持ってきたのに眠くてゲームに集中できなかった。
「ねぇ、そのマカロンちゃん見たことないんだけどっ!」
突然、後ろから男子生徒に話しかけられて焦る。未発売のゲームなので楽には自宅から持ち出すなと何度も言われていたのにゲームをやりたい気持ちに負けて持ち出していた。
振り返るとサッカー部で人気者として有名な男子生徒がゲーム画面を食い入るようにのぞき込んでいる。
どうしようっ!!見られたっ!
「あの…、これは…。」
「もしかして新作!?…あぁ、でもまだ発売されてないか…。」
「…えっと。…あのぉっ。」
普段、校内で誰とも話をしない一葉は初めて会話をする相手への緊張と楽との約束を破ってしまった罪の意識で体が硬直して言葉がなかなか出てこないでいた。
「…ごめん、突然話しかけたから驚いたよね?僕、2組の前川 陽太。1組の黒瀬さんでしょ?」
「…はい。そうですが…。」
一葉はゲーム機の画面を隠しながら答えた。
何で私の名前知ってるんだろう…。
「僕もそのゲーム大好きなんだよね!そのキャラクターの衣装、初めて見たんだけど…。チョコクラかチョコクラ2の裏設定か何か??良かったらそのキャラの出し方教えてもらえないかなぁ?」
よかった!まだ新作ってバレてないっぽい!
「…あの、これ、自分で設定したんじゃなからわからないんだ…。ごめん。」
できる事ならこの一言で会話を終わらせたかった…。しかし、前川くんは諦めてくれなかった。
「そうなんだー。残念…。もし、迷惑じゃなければそのキャラ設定した人にやり方教えてもらってきてもらえないかなぁ??」
「…わかった。」
「ほんと?ありがとう!めちゃくちゃ嬉しいよ!何か書くものある?」
一葉はポケットやお弁当バッグを探してみたが筆記用具は見つからなかった。
「ごめん。無い…。」
「んー…。そしたら、ちょっとごめんね。」
前川くんは制服のポケットから黒の油性ペンを取り出すと、私の手をとり自分のメッセージアプリのIDを書き始めた。
く…くすぐったい…。『pocapoca_hinata_1224』女子みたいなID…。
「やり方わかったらここに連絡ちょうだい!」
「…うん。」
「絶対だよ!僕、ずっと黒瀬さんとは話しをしてみたかったんだよね~。今度ゆっくりチョコクラについて話しようよ!ってか、僕がチョコクラが大好きだって秘密だよ。」
惚れ惚れする様なキラキラな笑顔を見せると前川くんは屋上からいなくなってしまった。
…どうしよう。楽に怒られる…。
どう説明すれば楽の怒りを買わないで済むか必死で考えたが、解決案は見つからなかったので今起きたことを正直にアプリのメッセージで報告をした。
ブブブッブブッ…ブブッ。
メッセージを送り握りしめたままのスマホが着信を知らせるのに震えている。
相手はもちろん楽からだった。
電話に出たら怒られるかな…。でも、出ないともっと怒られそう…。
「…もしもし。」
『お前馬鹿じゃねぇの??何やってんの?』
「…ごめん。」
『とりあえず、相手が裏設定って思ってるなら、そーゆー事にするから、見られたマカロンちゃんの画像を今すぐ送って。あと、相手のメッセージアプリのIDも。』
楽は言いたいことだけ言うと返事も待たずに通話を切ってしまった。
どうしよう。怒らせるだけでなく、嫌われてしまったかもしれない…。
完全に自分の過ちであるのは分かっているのだが、後悔と嫌われたと思うと涙が止まらない。泣きながらゲーム機に表示させたマカロンちゃんと手に書かれた前川陽太のIDの画像を楽にスマホから送った。
午後の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴ったが、教室に戻る気持ちになれず午後の授業の間はずっと屋上に隠れて過ごし、帰りのホームルームにも出ずにそのまま帰宅した。
昨夜は夕食の片づけを皆で済ませた後、一葉の部屋で楽と二人『チョコクラ3』を日付が変わるころまでプレイしていた。
しかし、あの短時間だけでは当然全ステージクリアできず、屋上の片隅でボッチご飯を終えたあと、ゲームの続きをするためにわざわざゲーム端末を持ってきたのに眠くてゲームに集中できなかった。
「ねぇ、そのマカロンちゃん見たことないんだけどっ!」
突然、後ろから男子生徒に話しかけられて焦る。未発売のゲームなので楽には自宅から持ち出すなと何度も言われていたのにゲームをやりたい気持ちに負けて持ち出していた。
振り返るとサッカー部で人気者として有名な男子生徒がゲーム画面を食い入るようにのぞき込んでいる。
どうしようっ!!見られたっ!
「あの…、これは…。」
「もしかして新作!?…あぁ、でもまだ発売されてないか…。」
「…えっと。…あのぉっ。」
普段、校内で誰とも話をしない一葉は初めて会話をする相手への緊張と楽との約束を破ってしまった罪の意識で体が硬直して言葉がなかなか出てこないでいた。
「…ごめん、突然話しかけたから驚いたよね?僕、2組の前川 陽太。1組の黒瀬さんでしょ?」
「…はい。そうですが…。」
一葉はゲーム機の画面を隠しながら答えた。
何で私の名前知ってるんだろう…。
「僕もそのゲーム大好きなんだよね!そのキャラクターの衣装、初めて見たんだけど…。チョコクラかチョコクラ2の裏設定か何か??良かったらそのキャラの出し方教えてもらえないかなぁ?」
よかった!まだ新作ってバレてないっぽい!
「…あの、これ、自分で設定したんじゃなからわからないんだ…。ごめん。」
できる事ならこの一言で会話を終わらせたかった…。しかし、前川くんは諦めてくれなかった。
「そうなんだー。残念…。もし、迷惑じゃなければそのキャラ設定した人にやり方教えてもらってきてもらえないかなぁ??」
「…わかった。」
「ほんと?ありがとう!めちゃくちゃ嬉しいよ!何か書くものある?」
一葉はポケットやお弁当バッグを探してみたが筆記用具は見つからなかった。
「ごめん。無い…。」
「んー…。そしたら、ちょっとごめんね。」
前川くんは制服のポケットから黒の油性ペンを取り出すと、私の手をとり自分のメッセージアプリのIDを書き始めた。
く…くすぐったい…。『pocapoca_hinata_1224』女子みたいなID…。
「やり方わかったらここに連絡ちょうだい!」
「…うん。」
「絶対だよ!僕、ずっと黒瀬さんとは話しをしてみたかったんだよね~。今度ゆっくりチョコクラについて話しようよ!ってか、僕がチョコクラが大好きだって秘密だよ。」
惚れ惚れする様なキラキラな笑顔を見せると前川くんは屋上からいなくなってしまった。
…どうしよう。楽に怒られる…。
どう説明すれば楽の怒りを買わないで済むか必死で考えたが、解決案は見つからなかったので今起きたことを正直にアプリのメッセージで報告をした。
ブブブッブブッ…ブブッ。
メッセージを送り握りしめたままのスマホが着信を知らせるのに震えている。
相手はもちろん楽からだった。
電話に出たら怒られるかな…。でも、出ないともっと怒られそう…。
「…もしもし。」
『お前馬鹿じゃねぇの??何やってんの?』
「…ごめん。」
『とりあえず、相手が裏設定って思ってるなら、そーゆー事にするから、見られたマカロンちゃんの画像を今すぐ送って。あと、相手のメッセージアプリのIDも。』
楽は言いたいことだけ言うと返事も待たずに通話を切ってしまった。
どうしよう。怒らせるだけでなく、嫌われてしまったかもしれない…。
完全に自分の過ちであるのは分かっているのだが、後悔と嫌われたと思うと涙が止まらない。泣きながらゲーム機に表示させたマカロンちゃんと手に書かれた前川陽太のIDの画像を楽にスマホから送った。
午後の授業の始まりを知らせるチャイムが鳴ったが、教室に戻る気持ちになれず午後の授業の間はずっと屋上に隠れて過ごし、帰りのホームルームにも出ずにそのまま帰宅した。