彼女はアンフレンドリーを演じている
04. 良心的な答え
会社から程近い駅前の店と知った時は、社内の人間に見つからないことを願うばかりだった美琴。
しかし、遼と合流して直ぐ店内に入れば不安は解消され、やがて全員が集まり飲み会が始まると周りを気にする余裕なんてなかった。
「美琴ちゃんと遼みたいなふざけた奴が知り合いなんて、マジで信じがたい」
「うるせーよ、お前が女連れて来いって言ったんだろ」
「言ったけどさぁ、まさかこんな綺麗すぎる子連れてくるなんて思ってなかった」
一体どんな大学生活を送っていたのか。友人たちの間で、遼がふざけた奴認定されているのを初めて知った美琴は、必死に笑いを堪えている。
遼の大学の友人達はノリも良く明るくて、それぞれ連れてきた女性達も、気さくな人ばかり。
久々の騒がしい飲み会は思いのほか楽しくて、冷静さを保ちつつもほんのり酔いは回っていた美琴。
ただ、これは合コンなんだと思い直して男性陣を意識的に眺めてみると、みんな顔は良くても何だか違う。
蒼太を相手にした、あの残業の日のような慌ただしかった心臓は、今のところ変化は見受けられないので。
どうしたものか、と酔い覚ましに水をちびちび飲んでいた時。
「美琴ちゃん、連絡先交換しない?」
「え……私?」
スーツを着た一人の男性が、美琴の隣の席に座ってスマホを取り出した。
本来、新しい出会いを求めてやってきたはずの美琴は、直ぐに承諾するかと思いきや。
どうやって断ったら良いのかと、困惑する表情を浮かべてしまう。
そこへすぐさま、遼が間に入ってきた。
「悪りぃな、美琴は今日そんなつもりねぇから」
「え? 何だよやっぱ遼の彼女なんじゃん」
「ちげぇよ、ただの同僚だっつの。無理に付き合ってもらっただけ」
渋々納得したスーツの友人は、そのまま席を立ち別の女性の下へ声をかけに行っていた。
遼の助け舟に事なきを得た美琴は、心の底から安堵したと同時に、これでは何も始められないと自分の覚悟の甘さを思い知る。
すると、隣の席に腰を下ろした遼が、ずっと考えていたことを口にした。