彼女はアンフレンドリーを演じている
美琴がワイシャツを脱がすと、程よく筋肉のついた蒼太の上半身が露わになって、すぐに視線を逸らしてしまった。
直視してしまうと更に意識する上に、万が一顔を赤くしてしまったら、蒼太に気付かれるから。
しかし、この静けさの中で自分の心臓が徐々に高鳴っていくのを感じ。
また、蒼太の視線も浴びている気がして、抱いてはいけない感情が込み上げてくる美琴。
「……シャワー浴びたい」
「え……」
「から、全部脱がせて」
「わ、わかっ……た」
蒼太に言われて素直に頷いた美琴は、その場に膝立ちとなって、続いてベルトを外すためバックルに触れようと手を伸ばした。
すると緊張のせいか、指先が少しずつ震えてくる。
蒼太を怪我させた自分の責任を果たすため、こんなことで緊張なんてしてはダメ。
ドクドクと慌ただしい心臓に言い聞かせて下唇を噛み締めた美琴が、ベルトを緩めて取り払うと。
ズボンの前あき部分に、ゆっくりと手を伸ばしたその時――。
「ごめっ、もういい!」
「っ!?」
美琴の肩をぐんと押し返して、自身も一歩後ろへと下がった蒼太は顔を背けるも、耳まで紅潮していて。
それを誤魔化しきれないまま、バタバタと足音を鳴らし慌てて脱衣所へと向かっていった。
「…………っ」
リビングに取り残された美琴は、脱衣所の方からドアを閉める乱暴な音を聞くと、脱力したようにその場に座り込む。
「はぁ、心臓がもたない……」
どんなことも行う覚悟はあった、取り乱さないように努めた。
だけど、蒼太の真っ赤になった耳を目撃してしまっては、もう意識しない方が難しいと項垂れた美琴。
それはつまり、蒼太の自宅に上がった時点で。
もしかしたら何かが起こるかもしれない予感も、ほんの少し抱いていたことも今更思い出してしまったから。
そしてそれは――。