彼女はアンフレンドリーを演じている
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週明けの月曜日、出勤したばかりの美琴は既に、デスクに座っていた課長の下へ足を運んでいた。
「おはようございます課長」
「冴木さんおはよう、先週は突然の出張ご苦労様」
「いえ、急遽半休にして頂きありがとうございました」
「とんでもない、むしろ冴木さんじゃんじゃん有給消化しちゃっていいからね」
部下の余っている有給日数を心配しつつ、課長が笑顔を浮かべた時。
それに応えるようにして一瞬、ニコリと表情が和らいだ美琴。
「……。」
「では、失礼します」
そんな表情を見たことなかった課長は、目を丸くして驚いていたが、直ぐにいつもの表情に戻った美琴はお辞儀をして自分のデスクに戻っていく。
上司として常にたくさんの部下たちへ気を配る課長は、先週に比べてほんの少しだけ美琴の纏っていた鎧のようなものが、軽減された気がした。
その理由が、共に出張した“蒼太によって”というところまでは、流石にわかるはずもなく。
ただ一年半前に異動してきて、仕事は出来ても未だに孤立している美琴が、少しでも心を開いてくれたら、と思っていた課長にとっては。
とても嬉しい一コマとなった。
しかし自席に座った美琴の姿を、出勤してきたばかりの二人組の女性社員が眺めていて、何やらコソコソと立ち話を始める。
「冴木さん、金曜日に急遽半休取ってたけど、一緒に出張に行ってた香上さんも半休だったらしいよ」
「え、なにそれ二人揃って休みにしたの?」
「怪しすぎるよね、ただの同期のフリして実は……ってやつ?」
営業部のエースである蒼太が不在というだけで、社内の女性陣は殺伐とした空気を放つというのに。
それが急遽、女性と二人きりの出張へ変更となった上。
その女性というのが、同期という理由だけで下の名前で呼ばれ、何かと気に掛けられている“無愛想の冴木”。