彼女はアンフレンドリーを演じている
ただ、そのことについて少しずつ考え方が変わってきた美琴は。
おもむろにスマホを取り出すと、蒼太とやりとりしたトークルームを開く。
蒼太の自宅を訪れたあの日、そのままソファで眠ってしまった蒼太にブランケットをかけ、静かに家を出てきた美琴。
そして無事自宅に到着し靴を脱いだ頃から始まった、メッセージの履歴が残されていた。
『美琴ちゃん!?もしかして帰った!?』
『うん、今家着いたところだよ』
『うわぁ、俺バカじゃん……』
深い眠りから目が覚めた蒼太は、家に美琴の姿がなくて慌ててメッセージを送ってきたのだが。
やはり酒のせいで記憶が曖昧となっていて、自分の家の明かりをつけた美琴は丁寧に返信する。
『寝てる蒼太くんに、帰るけど鍵どうしたら良い?って聞いたら』
『へ?』
『自動施錠って教えてくれたから、そのまま出てきた』
『寝ながら的確な回答してる俺……』
『ほんと、優秀だよね』
出来ることなら今日は朝まで一緒に過ごしたかったはずなのに、美琴をさらりと帰してしまった自分の言動にもガッカリしていた。
『見送れなくてごめん、つい嬉しくて飲み過ぎた』
『大丈夫だよ、それよりもちゃんと左手安静にしててね』
自宅のソファに腰掛けた美琴は、一人なのに近くに蒼太を感じて、不思議な感覚に包まれる。
まるで恋人同士の会話のようで、まだはっきりとそうなった訳ではないのに、と錯覚した時。
蒼太の返信に、美琴の心臓が反応を示した。
『早く美琴ちゃんを抱き締めて眠れるようになりたい』
「っ!!」
そのメッセージを見返したところで、現実の美琴は顔を真っ赤にして勢いよくデスクに突っ伏す。
尋常じゃない動悸を感じながら、胸を押さえて悶えており、始業前にメッセージを見返したことを反省した。