君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
すべてのことがこれから始まる心が弾むような感覚と大きなことに挑んでいく緊張感が、何とも言えず心地よい。古川さんの人柄もあってか、会議はそんな和やかな雰囲気で進められていった。
会議の最中も敏生の中には様々なアイデアや疑問が湧き上がってくる。それをすべて会議の中で発言するわけにはいかないので、終了を待ってさっそく古川さんに話に行った。
「うん。芹沢くん、いろんな意見をありがとう。ちょうどお昼だから、社食で食べながら話そうか」
古川さんは窓のブラインドを下ろして会議の後片付けをしながら、気持ちが逸る敏生に柔らかく微笑んで、そう言ってくれた。
その会話を聞きつけて、抜かりなくくっついてきたのは、鳥山だった。こんなところが、人懐っこく人間関係を作っていく鳥山の手法だ。別に彼を拒む理由もなく、3人で連れ立って社員食堂へ向かうべくエレベーターに乗り込んだ時だった。
「待ってください。乗ります」
その声に、敏生のすべての感覚が反応して、体が硬直した。
ドアが閉まらないように古川さんが「開」のボタンを押していると、敏生が察知した通り、結乃がエレベーターに駆け込んできた。