君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)



敏生が深く息を吸いなおして、何とか普段の自分を取り戻そうとしていたとき、鳥山が口を開いた。


「さっきの人は総務の片桐さんですよね?古川さんは彼女と面識が?」


話しかけられて、古川さんはにこりと微笑む。


「うん。総務と仕事をすることはけっこうあるんだよ。この前も株主総会の準備とかで、彼女はずいぶんと頑張ってくれたんだ」

「へえ~、そうなんですか。彼女はいろいろとよく気が付く子だから、助かったでしょうね」

「そうなんだ。株主の目線に立ってお土産の準備とか細やかにやってくれたよ。って、あれ?鳥山くんも彼女のこと知ってるの?」

「はい。冬にインフルエンザが流行って人が足りなくなったときに、ヘルプで来てくれてたんです。下手に媚びたりすることなく、コツコツ確実に仕事をこなしてくれて、本当に助かりました」


これを聞いていた敏生は、呼吸を整えるどころではなくなった。

結乃が営業部に来ていた時に、鳥山は別のチームだったから一緒に仕事はしていないはず。それなのにこの物言いは、結乃を意識してチェックしていた証拠にほかならない。常に彼女がいる状態で、ちゃっかり他の女の子も物色しているとは、さすが女たらしの鳥山だ。


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