君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
すると、鳥山はその視線に気づいたのか、敏生に目を合わせて、にっこりと人の心を蕩かす得意技の笑顔を見せた。
「あの子、俺に気があるよ」
この鳥山の一言に、敏生はそれこそ心臓が止まりそうになった。息をのんで固まって、自分がどんな表情をしているのかにさえ意識を向けられなくなる。
——まさか、そんなはずはない!!
必死で反論している叫びが、敏生の頭の中に充満する。それが顔にも表れたのだろうか、鳥山はその根拠を説明し始めた。
「俺の顔を見るなり顔を真っ赤にさせただろ。ヘルプに来てくれてた時にちょっと声をかけてあげただけなのに、あんなに緊張して。可愛いよなぁ~」
敏生の掌がじっとりと汗ばんで、体はわなわなと震えてくる。
結乃が顔を赤くさせたのは、誰でもない自分がそこにいたからだと、敏生は思っていた。あの雨の夜のキスを、反射的に思い出したからに他ならない。だけど、鳥山のこんな確信に満ちた言葉を聞くと、敏生の方の自信はしぼんでしまう。
「彼女みたいなタイプはちょっと強引に迫ってみるといいかもなぁ。戸惑ってドギマギしてるの、可愛いだろうなぁ・・・」
「……!!?」