君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第６話完結しました】（短編の連作です）

そこまで黙って聞いていた敏生が、さすがにこの言葉には反射的に反応した。


「鳥山さん、彼女いるんでしょう？つまみ食い感覚で、手当たり次第に手を出すのは相手に対して失礼だと思います」


少し厳しい語調の敏生に、鳥山は目を丸くして驚いたような表情を見せたが、すぐに不敵な笑みを見せた。


「さっきも言ったけど、俺はいつだって真剣なんだよ？そうじゃなきゃ、たとえ俺に気がある女の子だって、本気になって応えてくれないからね」


その言葉に、敏生は何も言い返せなかった。これぞ、鳥山がプレーボーイたりえる所以だ。

それまで鳥山に対しては絶対に感じることのなかった劣等感が、敏生の心の中に芽生えてしまった瞬間だった。


この鳥山が本気で落としにかかれば、見るからに男に免疫のなさそうな結乃は簡単に落ちてしまうのではないだろうか。

いや、〝男に免疫がない〟と、敏生が勝手に思い込んでいるだけで、実は結乃もいろんな男から誘いを受けたり、口説かれたりしてるかもしれない。目が合えばあんなに可愛く微笑む結乃を、そもそも男が放っておくはずがない。

そこまで思い至ると、経験したことのない焦燥感が敏生を襲った。