君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
「はぁ~、いいですね、モテる男は余裕があって。先輩なんてその気になれば、いつだって誰とだってデートできるんでしょうから」
恨めしそうな河合の物言いに、敏生は軽く息を漏らした。
「誰とだってデートしたいなんて思ってるヤツとは、誰だってデートしたいなんて思わないんじゃないのか?」
「は……?」
敏生の謎解きのような言葉を理解するのに、河合は頭が追い付かないようだ。
「デートしたいって言う前に、まず心の底から好きな子を見つけることだ。お前みたいに誰彼構わずがっついてるヤツは、女子からはどうでもいいヤツだと思われてると思うけど?」
「……!!」
河合は息を吞んで絶句した。普段は色恋沙汰に関心を示さない敏生なのに、その意外すぎる言葉。そして、それは核心のど真ん中を突いていた。
目を見開いたままの河合を横目に、敏生は手にあった空のペットボトルをゴミ箱に捨て、自分のデスクへと戻ろう……としたけれども、踵を返してロッカールームへと向かった。
もう悩んでいる猶予なんてない。早く結乃に会って、週末の約束を取り付けないと!