君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
敏生はもう自分でも持て余してしまうほど、結乃のことが心の底から大好きだ。だから、どうしても結乃とデートがしたい!
――今日こそは絶対に……!!
敏生は、会うための口実となる結乃の傘をロッカーから取り出した。そして、総務部のあるフロアへと向かう。ちょうど時刻も昼休みになったばかり。今だったらまだどこにも行ってないだろうし、話す時間もあるはずだ。
総務部の入り口に立って中を覗き、結乃の姿を探していると、
「芹沢くん?」
背後からかけられたその声に、敏生の胸がキュンと反応した。
振り向くと、探し求めていた結乃が立っていた。休憩時間になるのにも関わらず仕事をしているのだろう、手にはLED電球がある。
「それ、私の傘?」
第一声がなかなか出てこなかった敏生よりも先に、結乃が言葉をかけた。不意打ちを食らった先日は動揺してしまった結乃も、今日は努めて普段通りを心掛けているような感じだ。
「うん。これ、ありがとう。ずっと借りたままで、ごめん」
「大丈夫。傘はほかにもあるから」
結乃は空いている方の手で傘を受け取りながら、ニコリと笑顔を作って敏生を見上げる。