君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
電話を終えると敏生の視線に気が付いたのか、河合が声を上げた。
「あれぇ~、先輩~?何やってるんスかぁ~?」
日本語を話し始めた途端、いきなり頭のネジが緩んだ感じになる。
「お前は、普段から英語で会話した方がいいんじゃないか?」
「へ?」
と首をかしげる河合を見て、敏生はフッと鼻から息を漏らす。
「どうやら今日は首尾よく、女の子と花火を見に行けるみたいだな?」
敏生の指摘を受けて、河合は頬を紅潮させると満面の笑みで答えた。
「俺、これから合コンなんです~。花火が見える屋上ガーデンのカフェバーを鳥山先輩が押えてくれてて~。俺も誘ってくれたんです~」
――鳥山先輩……?
その要注意人物に敏生の意識がひっかかった。
鳥山ともあろう者が、花火大会のような絶好のデートチャンスを逃すはずはない。それなのに、その日に合コンをするということは……。
――ははあ…、彼女と行くつもりで予約してたのに、きっと別れてしまったんだな。
敏生は即座に状況の分析をし、密かに失笑した。きっと鳥山は合コンで新しい彼女を作って、あわよくば今夜はホテルにでも連れ込む算段なのだろう。