君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)


すっかり浮かれている河合は、敏生の様子を気に留めることなく(きびす)を返す。そして、足取り軽くオフィスを出ていこうというとき、


「ちょっと待て!!」


敏生に呼び止められた。
その低く凄みのある声に、河合は足を止めざるを得ない。


「……せ、芹沢先輩に構ってる時間はないんですけど」


河合が恐る恐る抗議してみても、敏生ははじめから聞く耳なんて持っていない。


「お前はその合コンに行かなくていい」

「はぁあ?!何言ってんですか?今日みたいな日に、先輩の仕事の手伝いなんてしたくありません~~」


河合は涙目になりながら、必死に抵抗を試みる。けれども、敏生は有無を言わさなかった。


「お前の窮地を、俺が何度救ってやったと思ってるんだ?ありがたいことに恩返しをする時が来たぞ」

「ええ?!今ですか?」

「今だ!」

「〜〜〜〜〜!!!」


河合は声にならない叫びを上げ、悶絶しながらも観念した。




鳥山が合コンのために選んだ場所は、いかにも女子が気に入りそうなカフェバーだった。緑と花が所々に配されて、お洒落で座り心地のよいソファーがある。そして空にある星々、今日は特別に花火が見えて……。本来ならばここで彼女と二人きりでロマンティックに過ごすはずだった場所だ。

今夜はここに、男女それぞれ4人ずつが集まることになっている。

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