君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
「なぁんだ、結乃〜。知り合いだったんなら、言ってよ〜」
小池と花田は、口を揃えてそう言った。今まで散々、敏生についての噂話を結乃の前でしてきたからだ。
「そうそう!知ってたら、片桐さんに芹沢くんとの仲を取り持ってもらったのに〜」
——お前、ぶっ殺されてーのか!調子に乗るんじゃねーよ!!
続いての川本の言葉に、敏生は思わず悪態が口を衝いて出てきそうになったが、結乃の前でもあるし、場所柄を考えて懸命にそれを呑み込んだ。
「それじゃ、仕切り直しの乾杯しよう!」
と鳥山が提案する。
この場を仕切っているのはこの鳥山であり、雰囲気を盛り上げているのも鳥山であることを、敏生は理解する。
だけど、鳥山のペースに乗せられてはならない。どうにか上手く立ちまわって、結乃を鳥山の毒牙から守らなければならない。
「飲み物、何にしますか?」
かいがいしく花田がドリンクリストを渡してくれるが、そんなもの見なくても、飲み会で敏生が頼むものは決まっている。
「ウ……」
ウーロン茶と言いかけて、敏生は思いとどまった。