君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
女子たちの注目を一身に浴びる敏生を、初めは忌々しい目つきで見ていた同僚の男二人も、この敏生の態度には苦笑する。
「芹沢みたいな仕事しか能がない、しょうもないヤツは放っといて、楽しくやろう!もうすぐ花火も始まるし」
「そうそう、花田さんグラス空いてるけど、何飲む?」
同僚たちから助けられたのか、貶されたのか……。
けれども、敏生には分からなかった。どうして初めて会った相手に、自分のプライバシーを曝け出さなければならないのだろう?こんな質問をして何か意味があるだろうか?敏生には全く理解できず、不愉快極まりなかった。
そんな様子の敏生を感じ取って、小池や花田は敏生ではなく他の二人の男との会話を楽しみ始める。それでも、隣にいる川本はしつこく言い寄っていたけれども、敏生はそれをほぼ無視した。
——ああ、マジで、楽しくない!
楽しくない代わりに、敏生の手はどんどんグラスへ伸びていき、本人でも気がつかないうちに何杯かのハイボールを飲み干していた。