君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
結乃はどうなのだろう。やはりこんな場を、楽しいと思っているのだろうか?
取りまとめ役だから、初めから乗り気だったのかもしれない。乗り気だったのなら、こんな場で〝彼氏〟を作ろうとしていたのだろうか?
敏生はそんなことを思いながら、正面に座る結乃へ目をやる。鳥山の隣で歓談する結乃は、楽しくしているように見えた。
人たらしの鳥山は、いきなりプライベートな領域の質問はしない。共通の話題などで外堀を埋めて警戒感をなくし、できるだけ結乃が話しやすい、いや話さざるを得ない話題を持ち出す。
まさに今、営業部で工事が進んでいる新しい給湯室兼休憩室のことなどは、格好の材料だった。
このプロジェクトに関わっている結乃は、一生懸命にそのことについて語り、鳥山は「うん、うん」と結乃を見つめ、笑顔で頷いている。その笑顔が人を魅惑する極上のものだということは、普段の鳥山を知っている敏生にはすぐに見抜くことができた。
敏生はじっと鳥山を見据えて、その言動を監視した。隣でまとわりついてくる川本のことなんて、すでに意識の中には存在していなかった。
それでも川本が気を利かせてハイボールのおかわりを頼んでくれるものだから、無意識に飲む酒の量だけが増えていく。