君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
それは、そうしてまんじりとした時間を過ごしていた、敏生の目の前で起こった出来事だった。
背もたれに添えられていた鳥山の腕が動き、そっと結乃の肩を抱いた。そのあまりにものさりげなさに、結乃も最初は気づいていなかったが、ふと自分の肩に載せられた鳥山の手に気づいた途端、体を硬直させた。
そして、とっさに向かいに座る敏生へと視線を投げると、じっと結乃を見つめ続けていた敏生と目が合った。
次の瞬間、結乃は目を逸らして下を向く。あからさまに鳥山の手を払うわけにはいかないと思っているのだろうか。身をよじらせて抜け出そうとしているけれども、鳥山はここぞとばかりに腕に力を入れて、結乃を自分の胸の方へ引き寄せた。
バン!!
と大きな音が響き渡った。
驚いた皆が体を竦ませると、敏生の手にあったグラスがテーブルに打ち付けられていた。
その尋常でない光景を、皆はただ息を呑んで見つめるばかり。
そんな中、敏生は凄みのある声で言い放った。
「馴れ馴れしく、ベタベタ触ってんじゃね——よ!このドスケベ野郎!!」
敏生の腕に自分の体をピッタリとくっ付けていた川本が、青ざめて後ずさりする。