君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
「別にそのことは気にしてないよ。あの川本ってヤツが君と一緒のところを見計らって、鳥山が君に話を持ちかけたことや、強引に君に取りまとめ役にお願いしたことは分かってる。君が断れないように、鳥山が仕組んだんだ」
「どうして…?知ってるの?」
結乃が目を見開いて、敏生を見つめている。敏生の隙のない推理は、真実を言い当てていたのだろう。
敏生は首を傾げる結乃を見つめながら、つくづく思った。
「……君が鳥山に何もされなくて、本当によかった……」
敏生の思いがつぶやきとなって、その口からこぼれ出てきたとき……、
ドン!!
と大きな音が鳴り、頭上に大きな花が咲いた。
雑踏の中で、二人は手を繋いだまま最初の大輪を見上げる。キラキラと眩い光の数々が夜空に消えていくのが、まるでスローモーションのように、敏生の目には映った。
「きれい……」
その美しさに見入って、結乃がつぶやく。
敏生も心が震えた。
それは、今まで特に感慨も抱いてこなかった花火が、こんなに心に響いて綺麗だったから……。それを見上げる結乃の横顔が、こんなにも透き通るように綺麗だったから……。