君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)





敏生はアルコールには弱い体質だった。全く飲めなくはないが、いつも悪酔いしてしまう。
先程、本音が抑えられず鳥山に暴言を吐いてしまったのも、おそらくアルコールのせいだろう。

だから、気の置けない人とでないと飲まないと自分を戒めていたのに、鳥山を前に冷静でなかった思考はとんでもないミスを犯してしまった。


「芹沢くん?!大丈夫?」


結乃が敏生を探し当てて、うずくまる敏生の背後から心配そうに声をかけてくれる。

思えば、女の子の結乃をあの雑踏の中に一人残してきてしまった。そのことも情けなくて、敏生の後悔はとまらない。


「うん、ああ。…大丈夫…」


結乃に心配はかけたくないし、これ以上醜態は見せられない。
そう思いながら、敏生は立ち上がった。


しかし、敏生の体は、敏生が思ったように動いてくれなかった。さっきまであんなに走ることができたのに、今は足がもつれて歩けない。


「あっ!芹沢くん!あぶない…っ」


結乃がとっさに身を寄せて、敏生の体に腕を回して支えた。


「……ごめん」


謝ることしかできない敏生は、消え入りたいほど恥ずかしかった。


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