君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
敏生の胸の鼓動が、結乃にも聞こえてしまうと思われるくらい暴れ始める。体の全部が震えてしまいそうになるのを、敏生は必死で押しとどめた。
「芹沢くん?私ね。本当は合コンなんて行きたくなかったの」
突然、結乃から話しかけられて、敏生の心臓はさらに跳び上がる。
目が覚めているのを気づかれているのかと思ったが、きっと結乃ならば真っ先に気分や体が大丈夫かどうか尋ねてくるはずだ。眠っていると思っているからこそ、結乃は語りかけてくれている……と、敏生は息を潜めて思った。
「だから、芹沢くんがあそこから連れ出してくれて、こうやって二人きりで花火が見れて、とっても嬉しい……」
と呟きながら、結乃はふっと笑いを漏らした。
「芹沢くんは、ほとんど花火見れてないけどね」
その優しい語り口に、敏生も思わず唇が綻びそうになる。
「こんなふうに、芹沢くんと二人でいられるのだって、今でも夢みたいなんだよ?偶然同じ会社に入れたけど、芹沢くんは超エリートだし会社中の憧れの的だし、……すごく遠い人だと思ってた……」
——……俺だって、ずっと遠くから見てるだけだった君に膝枕してもらってるなんて、夢みたいだよ……。