君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
敏生はドキドキする胸の鼓動を抑えつつ、眠ったふりをしながら心の中で結乃に応える。
「だけどね、私はすごくラッキーだと思うの。だって、芹沢くんと同じ高校だったから……。芹沢くんは私のことなんて知らないだろうって思ってたけど、覚えてくれててすごく嬉しかったし……」
——覚えてるどころか、高1のときからずっと君のことが好きなんだけど……。
なかなかうまくいかない告白は、心の中ではとてもスムーズだった。
でも、心の中ではなく、きちんと声に出して伝えなければならないと、敏生は思った。今日という機会を逃せば、次はいつ二人きりになれるか分からない。
気を失ってるふりをしている場合ではないと、目を開く覚悟を固めている時だった。
「あのね、芹沢くんちのネコちゃん、芹沢くんが高校で拾って帰ったよね?あのとき、私ね、ずっと芹沢くんのこと見てたの。あのときに…、私、芹沢くんのこと好きになったんだけど……」
——………………え………………?
確かに結乃の声で発せられた言葉。
その中の〝好き〟という部分だけが切り取られて、それが敏生の意識のすべてになる。