君とゆっくり恋をする。Ⅱ【第6話完結しました】(短編の連作です)
・先輩、鳥山
午後からの会議は取締役の重役たちも出席する重苦しいものだったが、鳥山の言う通り、万事スムーズにことが進んだ。そもそも敏生の案件のときに、もめることはほとんどない。敏生の提案にはアドバイスの必要も議論の余地もないからだ。
――片桐さんのことも、こんなふうに順調だったらなぁ……。
会議が終わって、会議室から営業部のフロアへと戻る道すがら敏生はそんなことを考えた。
――そうだ。プレゼンの準備をするみたいに、ちゃんと頭の中でシミュレーションしとけばいいんだ。
そんなこと今まで気づいてなかったのか!?……と、思わずツッコミを入れたくなるくらいの不器用さ。でも、それに気づくことができた敏生の頭の中は、いきなり目まぐるしく動き始めた。
――とりあえずは、傘を返さなきゃならないんだ。総務部に行っても呼び出してもらわない限り、なかなか片桐さんを見つけられないし。そうだ、直接メッセージを送って、どこかで待ち合わせて渡した方がいい。
敏生は自分のデスクに戻ると、すぐさまスマホを取り出して結乃へのメールを打とうとした。