White Snow3  前野晴久の苦悩

「今日何する?」

智花が作ってくれた朝食を食べながら尋ねられた。

「ああ、ごめん。今日夜飲みに行くんだったんだ」
「えーそうなんだ。友達?」

もぐもぐと口を動かしながら、智花が俺を見る。
目が合う。

どうしよう。
今日は梅原さんと飲みに行く約束をしてしまったのだ。
智花に名前を伝えるか躊躇する。

「ん?何?コンパにでも行くの?」
「ち、違うよ!」
つい焦ってしまった。

「何で動揺してるのよ?」
むすっとする智花にしどろもどろになりそうなのを必死に抑える。
「仕事の人と飲みに行くことになってたんだ。断り切れなくて」
よし。うまく言えた。

「・・・仕事の人って誰?」
「え?」
「女の人?」
「いや。男」
「・・・・」
「・・・・」

もしかして、やきもち焼いてますか?
ぶー垂れた顔をする智花に嬉しくなってしまう。

「なんで笑ってるのよ?」
「ごめん、やきもち焼かれたなって思って」
「そりゃ、焼くよ。晴久かっこいいし優しいからモテるから・・・」

なんて可愛いことを言うんだ。

智花の頭に手を回し、テーブル越しにキスをする。

「晴久・・・」
「可愛い」
と笑いかける。


「ありがとう」
とにーーーーーっこりとほほ笑む。
あれ?智花の目が笑っていない気がする。

じっと見ていると、智花の目がクワッとかっ開いた。
ええええええ!?

「で、誰と行くの?」
低い声に驚き、反射的に答えた。

「え、あ。梅原さん」
「は!?竜太郎?」

驚く智花に俺は今がチャンスと聞き返す。

「ねえ、智花と梅原さんってどういう関係?」
「え?竜太郎は・・・大学の時にゼミが一緒で仲良かった仲間の一人…だよ」

「それだけ?」
「・・・ではないけど。それ以上の関係でもない」

「言えないような関係?」
「言えない関係ではないけど、言ってもいいかは分からないから言えない」

「・・・・・」
「でも、付き合ったりとか、好きだったとかそういうのは全くないから」

「・・・・・」
「本当に」

「・・・・わかった。ごめん、俺の方が嫉妬してる」
智花はぶんぶんと首を振った。

「心配させてごめんね」
と謝るから、俺も首を振った。

「でもね」
智花が真剣な顔で言葉を続けた。

「二人では行かせない。私も行くから」
「はあ?!」

「大丈夫。私が一緒に行っても竜太郎には文句は言わせないから」

仁王立ちで、しかも右手をグーにして宣言する智花。
いったいこの二人の関係ってなんなんだ?



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