この恋がきみをなぞるまで。


休み時間や放課後の自主練には参加しないまま、時間だけが過ぎていく。

練習場所の確保は他クラス、他学年との兼ね合いがあるし、チームメンバーも決まっている状況でわたしが毎回不参加であることに不満を持っている人もいる。

今日は練習がないバレーチームの子たちとクラス旗を制作しているけれど、時々交わす会話もぎこちない。


「福澄さん、本当に出られるの……?」


今日進められるところは終わって、片付けに残っていると、大谷さんが控えめに声をかけてくる。

大谷さんは去年も同じクラスで、球技大会には参加していなかったことを知っている。

去年は救護班として保健室で怪我の手当てを手伝っていて、大谷さんの突き指を確認したのもわたしだ。


「ごめん、こっちに残ってても気を遣わせてるよね」

「ううん、そんなの全然気にしないで。言いづらいこともあるんだろうし……無神経な方がどうかしてるんだよ」


柔らかい物言いの言葉尻にはどことなく棘があって、大谷さんの新たな一面を垣間見る。


「体育を見学していることに理由があるって、わかってる子はこのクラスにたくさんいるよ。私は福澄さんじゃないから、無理とは言えないけど、辛かったら言ってね」

「参加しても、本当端っこでちょろちょろしてるくらいかもしれなくて。下手なら下手で何で練習に来なかったんだって、言われないかな」

「言われないよ!⠀私も去年のバレー、トラウマだもん。福澄さんが手当てしてくれたけど、突き指痛かったし」


だんだんと緊張が解れていって、大谷さんのペースに巻き込んでくれる。

片付けを終えて、大谷さんは使った画材を返してから帰るとのことでその場で別れた。

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