この恋がきみをなぞるまで。
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涼花との間にあった塀のような一線を取り払っても結局同じバスケのチームメイトとのわだかまりはそのままに、球技大会当日を迎えていた。
クラス旗の制作もあれ以降手伝っていなかった。
とにかく早く学校から離れたくて、気分転換に昴流の練習を見に行ったときに桐生くんと会うこともあったけれど、他クラスだからクラスメイト間でのいざこざは相談しにくい。
午前中に1年生の試合が終わると、部活動のパフォーマンス枠があってから昼休憩に入る。
午前中は保健室で去年同様に手伝いをしていて、午後は競技に参加することを伝えると、くれぐれも気を付けるようにと釘を刺された。
お昼ご飯を一緒に食べた涼花は、午後一番のバレーに参加するようで早々に待機場所に行ってしまった。
ひとり取り残されて、バスケの試合開始まで空き教室で時間を潰す。
ポケットに入れていたプログラムでは、バレー、フットサル、バスケの順になっている。
このあとには3年生の試合も控えていて、体育館をふたつ使うから進行も早い。
13時半には集合となっているけれど、皆きっとこの時間より早くに集まってる。
左腕を擦りながら、今朝のことを思い出す。
最近は少し痛みが続いていて、鎮痛剤を使っている。
本当なら、試合に出られるような状態じゃない。
日和さんには球技大会に参加することは伝えていないし、競技者一覧にわたしの名前を見つけて体育教師も何日か前に声をかけてくれたけれど、平気だと言ってしまっている。
一度でも練習を見に行くべきだったのかもしれないと今更考えたって遅い。
バスケットボールなんて、まともにしたこともない。
ルールだけは頭に入れてきているけれど、実際コートに立つのと絵や映像で観るのは違う。
「……こわい」
声にしてしまえば、波紋のように広がっていく。
不安な要素をいくつも残して今日を迎えてしまったわたし自身がいけないとわかってはいても、邪な考えが頭を過ぎる。
逃げたい。
ここにいたら、きっと見つかってしまう。
涼花とお弁当を食べているときに、同じクラスの男子が廊下を通りかかっている。
午前中の部活動のパフォーマンスで足を擦りむいたと、わたしのいた時間に滑り込みで保健室に来た人で、ついさっきお礼を言われたのだ。