この恋がきみをなぞるまで。
◇
数日が経ってからも、何となく、あのときの告白相手が言っていたことが気になっていた。
城坂くんと同じクラスになったのは今年が初めてで、同じ教室で過ごしていても大した接点はない。
ちょっとしたことが引き金となって、何度か口論になったことはあるけれど、人前では城坂くんだって弁えている。
ふたりきりになるような状況さえ避けられたら、城坂くんとわたしの間には何も芽生えない。
いつも一緒に帰る友人がなかなか来ず、教室にはわたししか残っていない。
鞄の底に横たわっていた携帯を確認すると、急ぎの用が入ったから先に帰るとメッセージが届いていた。
了解、と送ると、すぐに『気付いてなかったでしょ? ごめんね』と返ってきた。
待っていても人は来ないし、帰ろうと席を立つ。
廊下を走る足音が聞こえたけれど、気にせずに開けっ放しのドアを出ようとしたとき、目の前が誰かの体躯でいっぱいになった。
お互いに片足を踏み出しているから、急には止まれない。
「あっ……」
咄嗟にスクールバッグを前面に抱えて、ぎゅっと目を閉じる。
寸でのところで相手が避けたようで、肩の辺りがぶつかっただけで倒れずに済む。
恐る恐る顔を上げると、これでもかというほど眉根に皺を寄せる、城坂くんがいた。
「っ、ごめ……」
「黙れ」
一切目を合わせずに、肩を押しのけられる。
その手も、わたしには触れたくないというように、突き放すように一瞬当たっただけ。