この恋がきみをなぞるまで。





数日が経ってからも、何となく、あのときの告白相手が言っていたことが気になっていた。

城坂くんと同じクラスになったのは今年が初めてで、同じ教室で過ごしていても大した接点はない。


ちょっとしたことが引き金となって、何度か口論になったことはあるけれど、人前では城坂くんだって弁えている。

ふたりきりになるような状況さえ避けられたら、城坂くんとわたしの間には何も芽生えない。


いつも一緒に帰る友人がなかなか来ず、教室にはわたししか残っていない。

鞄の底に横たわっていた携帯を確認すると、急ぎの用が入ったから先に帰るとメッセージが届いていた。

了解、と送ると、すぐに『気付いてなかったでしょ? ごめんね』と返ってきた。


待っていても人は来ないし、帰ろうと席を立つ。

廊下を走る足音が聞こえたけれど、気にせずに開けっ放しのドアを出ようとしたとき、目の前が誰かの体躯でいっぱいになった。

お互いに片足を踏み出しているから、急には止まれない。


「あっ……」


咄嗟にスクールバッグを前面に抱えて、ぎゅっと目を閉じる。

寸でのところで相手が避けたようで、肩の辺りがぶつかっただけで倒れずに済む。


恐る恐る顔を上げると、これでもかというほど眉根に皺を寄せる、城坂くんがいた。


「っ、ごめ……」

「黙れ」


一切目を合わせずに、肩を押しのけられる。

その手も、わたしには触れたくないというように、突き放すように一瞬当たっただけ。

                                                                                                                                                                                                                                                                  
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